4.亡くなった方との関係の再構築が必要 大西秀樹先生 インタビュー

(BY Atsuko MINATO)

ヒルル:実際にはどんなタイミングで気付かれるんでしょうか?
大西先生:あるご主人を亡くしたご婦人は、夫がいなくて悲しくて仕方がない、そして次に夫がいないから恥ずかしいという気持ちになり、犬の散歩も買い物も帽子を深くかぶって早朝か深夜、人と会わない生活を続けていました。しかしある時、娘さんに「お父さんはそんなみじめな生き方だった?悲しいのは自分が悲しいだけでしょ?お父さんは立派に病気と闘って死んだ」と言われて目から鱗が落ちたそうです。またある時は、泣いていても笑っていても同じように時は過ぎていく、ということに気付いたそうです。また、別の患者さんは、 Il Divo の美しい広がりのある音楽を聴いて、夫がいなくなったという考え方から、夫は 広い世界のどこかにいる のかも?という考え方へ変わっていきました。

ヒルル:何かに気付くことで、物事を別の角度から見ることができるようになるんですね。
大西先生:そうですね。でも配偶者を亡くすと、自分の人生も終わった、自分の人生には意味がないと頑なに思ってしまうので、立ち直るのは容易ではないんです。時間をかけて 意味の再構成 をしていくことが必要です。 意味のない人生などない ということに気付いて、亡くなった方との 新しい関係性を構築 する、ということです。亡くなった方が自分を後押ししてくれるとか、つながっている というという感覚を抱くことができるんです。

ヒルル:いつか悲しい思い出が違う形に変わる日がくるのでしょうか?
大西先生:娘さんを 卵巣がん で亡くされて 10年 遺族外来 に通院されている方も、いまだに亡くなった子供と同世代の人を見るたびに「 娘が生きていれば・・・ 」と思い出してしまうそうです。でも片付けられなかった娘さんの部屋も、娘さんに送る「 天国への宅急便 」と思って片付けることができるようになりました。 悲しみを完全に昇華する ことは難しいですが、 悲惨な思い出 を少しずついい思い出に変えていくことはできると思います。一足飛びにはいきません。何年もかけて、行きつ戻りつしながらです。 そのお手伝い をするのが、私たちの仕事だと思っています。

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