震災後の心のケア②【グリーフケア】 | 保坂隆先生
震災後の心のケア② 【グリーフケア】聖路加国際病院精神腫瘍科 保坂 隆
May 9, 2011
○グリーフケア グリーフとは 悲嘆 のことで,死による喪失から生じる深い心の苦しみのことです。被災地のすべての方は,その家族や近所の方や友人を亡くした方だと思います。人はこの悲嘆に際して,次の4つの課題があると言われています。
① 喪失の現実を受け入れる
② 悲嘆を苦痛なものとして受け入れる
③ 変化した環境に適応する。
④ 死者に注いでいた多量のエネルギーを新たな関係に向け変える。
また別の学者は悲嘆のステップを,急性期(初期,ショックの段階:1~2週間),中期(死者に心がとらわれる段階:数週間~1年),回復期(人生が継続していることを認識し始める時期)と分けています。急性期とは,死別直後から数週間までのショックの段階のことであり,中期とはこれに続いて,死者に心がとらわれている時期です。多くの被災者はこの急性期にあるか,中期に入りかけている時期かと思われます。
今回のような突然死や予期しない死であれば,急性期のショックはさらに大きなものになります。非現実的な感覚で無力感に苛まれ,誰かに怒りを向けたいような気持ちにもなります。中期に入りかけた方は,暗く沈んでいる時期に入っているわけですから,今こそ傾聴したり,そっとしておいてほしいという方のことは温かく見守ってあげることが大切になってきます。
一方,これらに加えて忘れてはならないのが,【サバイバー・ギルト(生存者の罪悪感)】です。大きな災害で生き残った人が「自分だけが生き残っていいのか?」とか「周囲の人間を助けられなかった自分が生き残っていいのか?」という 罪悪感 です。この【サバイバー・ギルト】に悩む方に対しては,
① この災害は予測不能で,生き残った人でも大きな喪失をしていること
② 災害発生時にも人は「怒り」が生じ,そのはけ口がない時には自分に向かうこと
③ できることはすべてやったんだということ
などを理解していただき,
④ 人はどんな喪失感に打ちひしがれていても,前に向かって進まなければいけないこと
⑤ 具体的な支援・復興活動に加わること
などが大切だ,というような対応をしていきます。
○東日本大震災の特徴 グリーフは,近親者や知人の死を知ったところから始まります。しかし,今回の震災の特徴は未だに1万人を超える方が行方不明だということです。つまり,グリーフがスタートできない,諦めきれない,という気持ちでいる被災者の方がたくさんいらっしゃるということです。この方たちの心のケアがきわめて難しい.
Tweet <<<震災後の心のケア①に戻る
保坂 隆(ほさか たかし)先生
「緊急寄稿 東日本大震災によせて」その他の 保坂隆先生 記事
保坂 隆(ほさか たかし)先生 聖路加国際病院精神腫瘍科、聖路加看護大学院 臨床教授
ご専門は、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)、リエゾン精神医学
詳しくは、



