震災後の心のケア① | 保坂隆先生

2010sm_01.gif 震災後の心のケア①
聖路加国際病院精神腫瘍科 保坂 隆
May 2, 2011
震災後かなり早い時期から「心のケア」の必要性が専門家から指摘され,実際に,彼らは被災地に向かっていきました。本報では,この「心のケア」とはいったい何を,どのようにやったらいいのかを述べてみたいと思います。 

 【被災地での心のケア】

○精神医療の継続  まず,それまで被災地で精神疾患の治療をしていた患者さんの継続した治療を提供しなければいけませんでした。このとき他の医療物資と同様に,アクセスの悪さも関係して,必要な薬物が手に入りにくかったことは周知の通りです。このような震災の際には,精神疾患が悪化することが多いので,それに対する手当が急務でした。うつ病で治療を受けていた方が,震災をきっかけに興奮状態から躁状態に転ずることも少なくないことも指摘されています。この医療者の迅速な対応は,阪神大震災から得た教訓であったことは疑う余地がありません。

○傾聴  震災直後の恐怖感を和らげるためには,言葉として表現すること(言語化)が大切で「(心理的)デブリーフィング」とも呼ばれる。自信が体験した状況を正しく認識し,自分が経験している不安や恐怖感が正常反応であることを確認する作業です。医療者だけでなく,ボランティアの方にもやっていただける作業だと思います。

○グループ療法のファシリテーター  この傾聴の仕方としてグループ療法があります。同じ体験をした方たちが,10人くらいが集まって,集団で話をすることは不安や恐怖の緩和に役立つばかりでなく,情報交換や,ストレス対処のための生活の知恵なども共有できるからです。がん患者さんのグループ療法などで,その効果は実証されています。ただし,これが井戸端会議的な雑談にならないように仕切る役が必要になり,その役のことをファシリテーターと呼びます。できれば医療者がファシリテーターには適役です。できれば,同じメンバーで数回続けると凝集性や団結力が高まり,その後の相互サポート(話しかけたり,情報を流したり,助け合ったり,など)が自然にできるようになっていきます。

○薬物療法  震災直後だけでなく,不眠や不安を呈する方はたくさんいらっしゃいます。抵抗感はあるかもしれませんが,最も確実な対処方法は睡眠導入剤や抗不安薬を一時的に服用することです。この時に注意しなければならないのは,飲酒で対処することは禁忌です。このような状況下では容易に依存症に発展してしまうからです。

気晴らしコーピング  目の前の現実の状況を解決するための対処様式(コーピング)はもちろん大事ですが,時には気晴らしも必要なもの。体操をしたり,散歩したり,歌を歌ったり,などの気晴らしがこの時期には必要で,ボランティアにできる心のケアです。
 震災後の心のケア②【グリーフケア】に続く>>>
Takashi_HOSAKA_MD.jpg保坂 隆(ほさか たかし)先生
聖路加国際病院精神腫瘍科、聖路加看護大学院 臨床教授
ご専門は、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)、リエゾン精神医学
 詳しくは、
  ・先生紹介

詳しくは、保坂隆先生の著書『 災害ストレス 直接被災と報道被害 (角川oneテーマ21) 』を読んでみてください。
 
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