「ストレス関連死」を防げ 保坂隆先生

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「ストレス関連死」を防げ
聖路加国際病院 精神腫瘍科
聖路加看護大学院 臨床教授
保坂 隆 Sunday, April 3, 2011

「ストレス関連死」の報道を見るたびに,国民の誰もが悲痛な思いをいだきます。「ストレス関連死」とは,地震や津波の後の被災地における生活のストレスや,不十分な医療環境のなかで,血圧が高くなって脳血管障害や,心臓疾患で亡くなったり,寒さの中で低体温になったり,定期的に受けなければいけない血液透析などが受けられなくなり亡くなってしまうことを言います。しかし,地震や津波を生き抜いた方たちが,その後のストレスその他で亡くなってはいけません。いえ,亡くならせるような対策ではいけません。

メディアの報道も,「よく睡眠をとって,ストレスを避けるようにして・・」というような当たり前の提言で終わってしまっています。しかし,ゆっくり休めない劣悪な環境が3週間を過ぎた今も続いているということのほうが問題なのです。また,医療者チームらも,薬の供給の悪さや医療環境の不十分さと戦いながら,懸命の活動を続けています。しかし,薬や点滴などの医療品が少ない状況では限界があり,「普通の医療を施せないで救えないことが悔しいんです」と涙する入りに姿もテレビに映っていました。さらに,健康を損ねそうなハイリスクの高齢者たちを,近隣の病院や施設へ入所させようとしても,既に入所者であふれている様子が報じられたりしています。

阪神淡路や中越の経験から,ボランティアの医療者らが全国各地から早期に現地入りし,避難所を回診したり被災者を診察しているところが報道されています。しかし,やはり過去の震災とは大きく違っていることがあります。それは,今回の被災地の交通アクセスの悪さと,寒さだろうと思います。交通アクセスの悪さは医療品や食料の供給不足につながり,ガソリン不足もそれに拍車をかけています。一方で,3月の被災地の寒さは,灯油不足と相まって避難所にいても「低体温症」を招いています。

私は,被災地に人や物資が集まるだけではなく,ハイリスクの高齢者たちが 被災地を離れる という方向性が少なすぎるのではないかと思っています。つまり,中高年者を含む比較的若い方たちが,ボランティアや医療者の力を借りて,被災地の復興を支えていく一方で,高齢者は各都道府県に一時的に移住するべきだと思っています。暖かく栄養も十分に摂れるような環境で健康を取り戻していただき,メディアやインターネットを通じ故郷が復興していく様子を見て,電話などで残された家族とも連絡をするというような仕組みができないものかと,いつも歯がゆく思っています。一部では既に行われていることですが,これをもっとダイナミックに推し進めていくべきでしょう。当然,故郷や家族を離れるわけですから,知っている高齢者同士が一緒のグループになって,同じ受け入れ先に行かなければいけません。

このように,被災地へと人や物資が集まるという方向性だけでなく,逆に被災にあった高齢者をはじめハイリスクの方々を遠方全国へ一時的に移住するというダイナミックな「双方向性の動き」が今の時点で望まれているのです。

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保坂 隆(ほさか たかし)先生
聖路加国際病院精神腫瘍科、聖路加看護大学院 臨床教授
ご専門は、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)、リエゾン精神医学
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