東北大震災によせて - 急性ストレス障害とサバイバー・ギルトを乗り越えて - 保坂隆先生

急性ストレス障害, サバイバー・ギルト, 東北大震災, 保坂隆, 聖路加国際病院 精神腫瘍科
緊急寄稿 東北地方太平洋沖地震によせて
 ー 急性ストレス障害 と サバイバー・ギルト を乗り越えて ー
聖路加国際病院 精神腫瘍科
保坂 隆 March 27, 2011

 震災後2週間が経過しました。依然として続いている余震に放射能漏れも加わり,国民すべてが不安状態に陥っていますが,そろそろ「心のケア」が必要な段階になってきています。

❒ 災害時1ヶ月以内に起こる「急性ストレス障害」 

 もともと精神疾患をもった患者さんたちにとっては,薬が不足していたり通院が困難になったりという点が問題になっています。 また,これまで精神疾患をもっていない方にとっても,この時期には精神的に不安定になってきています。死に関わる今回の地震や津波の被害に遭遇したり目撃するような大きな出来事の後で不安・不眠・興奮・恐怖が生じたり,逆に現実感が消失したり茫然自失となるような精神状態は「急性ストレス障害」と言います。大きな出来事の1ヶ月以内の場合に診断できますので,地震から2週間のこの時期は,まさにたくさんの「急性ストレス障害」の患者さんがいらっしゃることになります。 これは被災地の方々に限ったことではなく,TVを通じてリアルな被害状況を目の当たりにしたり,実際に余震が続いている東日本全体に広く見られることになります。

 ❒ 可能ならば恐怖心が残る場所から遠ざかること

 そして可能なら,恐怖感が残る場所からできるだけ遠ざかることです。町を失った方たちが集団で他の町に移動している場合には,故郷を離れる寂しさはあっても,恐怖感は軽減していきます。そして,恐怖心を呼び戻すような報道番組はもう見たり聞いたりしないということも効果があります。2週間経った今も情報を集めることは大切ですが,そろそろ報道番組から離れてもいい時期だろうと思います。

 ❒ 生きていることに感謝

 この「急性ストレス障害」に加えて,「サバイバー・ギルト(生存者の罪悪感)」も生じます。大きな災害で生き残った人が「自分だけが生き残っていいのか?」とか「周囲の人間を助けられなかった自分が生き残っていいのか?」という罪悪感です。このサバイバー・ギルトに悩む方に対しては,次のことをよく考えて理解していただきたいと思います。

 ①この災害は予測不能で,生き残った人でも大きな喪失をしていること
 ②災害発生時にも人は「怒り」が生じ,そのはけ口がない時には自分に向かうこと

 そして大切なことは、

 ③人は、どんな喪失感に打ちひしがれていても,前に向かって進まなければいけないこと
 ④具体的な支援・復興活動に加わること

 です。是非、皆さんの心に刻んでいただけたらと思います。


 人は生きている限り諦めてはいけません。 生きていることに感謝して,ご自分の日常生活をしっかりと守った上で、自分も復興活動に参加していくことができると思うことで,罪悪感は少なくなっていきます。 いま日本中の人が,自分たちができることを通して被災地の復興を願っています。 支援する側の人たちは,被災地の方たちの元気な姿を見て,触れて,逆に元気をいただいています。 助け合うことの大切さを教えてくださった皆さんをずっと応援していきます。


詳しくは、保坂隆先生の著書『 災害ストレス 直接被災と報道被害 (角川oneテーマ21) 』を読んでみてください。
 

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保坂 隆(ほさか たかし)先生
聖路加看護大学院 臨床教授、聖路加国際病院精神腫瘍科
ご専門は、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)、リエゾン精神医学
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