取材 癌研有明病院 瀧澤憲 先生

今回は,癌研有明病院の 瀧澤 憲(たきざわ けん)先生を取材させて頂きました。インタビューはこちら

瀧澤先生は,同病院のレディースセンター長兼婦人科部長であり,この2009年9月からは副院長にもなられ,『ヒルル』の取材も相当無理な中,社会的大義を受け止めて取材に応じて頂きました。

さて,取材の中身なんですが,

我々スタッフはあたかも Back to School のようでした。


たとえば,「卵巣がんになりやすい人の特徴」という割と具体的な質問を瀧澤先生に訊くと,


産業革命・合衆国独立戦争→欧米の学者の仮説の立て方と日本との違い→日本の開国から高度経済成長及び科学性発がん物質etc.


こうして,歴史背景,欧米と日本との相違点,日本の実情をふまえての欧米の研究調査結果の有効性,ここでやっと質問にフォーカスすることができました。

比較的抽象度の高いところから具体的な対象に到達するやり方,わたしは実に大切なことだと思います。

会社の中でも日々の到達目標に追われていると,なかなか抽象度を上げて思考することが困難ですが,なにか壁にぶち当たって,もがくほど状況が悪くなるときは,このような思考方法を私たちは自然とやっていると,思います。

具体的なものを並べられて,どれか一つを選ばなくてはならないとき,たとえば医師から治療方法をいくつか提示され,それぞれのメリット・デメリットを説明されて選ぶ場合にも当てはまると思います。

左脳的に冷静に判断することも大事ですが,やはり自分自身との対話して「自分はどうなりたいのか」を,具体的なものを選ぶ前に,しっかりと持つことが重要だと思います。



「排卵誘発剤と卵巣がん」について

これについて瀧澤先生は,現状では関連性づけるのは,データ不足としています。


4年・5年・6年と長期にわたって服用しているデータがあるピルと違って,排卵誘発剤は実質数ヶ月という短い期間であり,それをもって関連づけるのは無理があるとの見解です。


もっとも,排卵誘発剤の使用前には卵巣がん他の検診は,当然の如く必要です。
この件について瀧澤先生は,なんと鶏の卵巣がんの米国での研究も引用されて説明してくれました。


BRCA1,2の遺伝子異常

この遺伝子を一番多く持っている人種は,ユダヤ人で約10%ほど。日本人は,欧米人よりは,やや高いとのことでした。近親婚の多さがが原因と考えられています。


このBRCA1の遺伝子異常を持っている場合の乳がんの生涯危険率は80%以上で,卵巣がんの生涯危険率は60%以上というデータがあるそうです。乳がんの場合が100人中80人以上ということですから,非常に高い数値です。


遺伝子の検査をする機関は日本でもあるそうです。

ただ,日本の国民性もあり,こと遺伝子に関してはナーヴァスな事柄でもあります。遺伝子差別等から自らの結婚・出産の機会を閉ざしてしまう恐れもあり,検査後のカウンセリングも必要です。また,個人情報が厳格に守られることも,もちろん必要です。


『ヒルル』では,この部分は軽く触れるに留めました。


瀧澤先生の著作
  「心配しないでいいですよ 再発・転移 卵巣がん」
   真興交易(株)医書出版部(2008年)


この本は,癌研有明病院で婦人科治療を受ける全ての方々が読まれるとのことです。

タイトル中の,「再発・転移」とありますが,予防の観点からも読まれることをお勧めします。

ウラ話としては,瀧澤先生の原稿を易しい口語体に直すのに,編集担当者の方が相当な労力を費やしたそうです。
なんとなくヒルル編集長は察することができます。瀧澤先生のお話の中で欧米の研究者たちが研究論文を書く際の陥りがちな傾向まで説明していただきましたので,,,「卵巣」の本を書くのは、やはり大変だと、婦人科腫瘍専門医の先生方の一致する意見でもあります。

年の瀬のお忙しい中,瀧澤先生及び癌研有明病院の総務課様に,たいへんお世話になりました。