2. 配偶者との死別は最大のストレス 大西秀樹先生

(BY Atsuko MINATO)

ヒルル:そもそも、がん患者のみならず、がん患者をサポートする家族も、がん告知の時点から強いストレスにさらされますね。
大西先生:家族は、大切な人を失ってしまうかもしれないという悲しみ(予期悲嘆)を抱えながら、ケアギバー(caregiver)として献身的に振る舞い、自分を抑えがちです。悲しいのに患者には笑顔を向けるという二つの矛盾する立場が、家族の心を余計に つらく します。それ以外にも、経済的な問題(一家の稼ぎ手がいなくなる)や子供の問題(お母さんが患者の場合)などの社会的問題を抱えることになります。また家族の中に潜在していた問題が急に顕在化したり、摩擦が生じたりすることもあります。がん患者の 3-4 割が何らかの精神疾患を併発しますが、実はそのご家族も 1-4 割の割合で 適応障害 や うつ病 などの精神疾患を併発します(調査によって差があります)。そしてご家族が受ける精神的ダメージの大きさも、がん患者のそれとほぼ同程度なんです。一般的に介護している人の免疫機能が低下し、死亡率は上昇すると言われています。ご家族が「第二の患者」と言われる所以です。このようなご家族の心のケアを、家族外来 で行っています。

大西秀樹先生,精神腫瘍科,埼玉医科大学国際医療センター

ヒルル:そして近親者、特に配偶者が亡くなられたりすると、さらに事態は深刻になるんですね。
大西先生:アメリカで行われた人生のさまざまな場面における ストレス度 の調査では、配偶者の死を最大の 100 と数値化しています(図1)。配偶者との死別は、何にも増してストレス度が高いんですね。また54歳以上の男性の調査では、配偶者、パートナーとの死別後 6カ月以内の死亡率が、配偶者のいる場合に比較して約 40% 上昇することがわかっています。また死別後1年以内に 抑うつの兆候 を呈する未亡人は 47% にのぼり、夫がいる女性の8%と比較すると有意に高いことが知られています。そして配偶者との死別が、高齢者における うつ病 発症の最大の 危険因子 と言われています。ここには「子供との死別」という項目はありませんが、そのストレス度と悲しみは配偶者の死に勝るとも劣らないと考えられます。

ホームズとレイの「社会的再適応評価尺度」
  ライフイベント 生活変化単位値
  配偶者の死 100
  離婚 73
  別居 65
  刑務所などへの勾留、服役 63
  近親者の死 63
  自分のけがや病気 53
  結婚 50
  解雇、失業 47
  夫婦の和解(よりを戻す) 45
  退職や引退 45
  家族が健康を害する 44
  妊娠 40
  性生活がうまくいかない 39
  新しく家族のメンバーが増える 39
  仕事上の変更(異動など) 39
  経済状態の変化 38
  親友の死 37
  職種換えまたは転職 36
  夫婦の口論の回数が変わる 35
  1万ドル以上の借金 31