患者はどのようにがんを受け入れていくのか?保坂隆先生interview_4

精神腫瘍医 保坂 先生 インタビュー (BY Atsuko MINATO)

 患者はどのようにがんを受け入れていくのか?保坂隆先生 interview_4


ヒルル:告知された患者の心の内を家族も知りたいと思うのですが、教えていただけますか。

保坂先生:根源には「怒り」があります。「どうして自分が、がんにならなければいけないんだ!」という怒りです。この怒りが内側に向くか外側に向くかで、表現が変わってきます。内側に向く場合は、「あの時ああすればよかった」「早く受診すればよかった」といった自責や後悔の念にさいなまれます。外側に向くと、「あの医者はどうして早く見つけてくれなかったんだ」「酒やたばこをやっている夫の方ががんにならないで、どうして私が!?」といった周囲への八つ当たりとなって表れます。

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ヒルル:それでも自分の病気を受け入れて前向きに取り組んでいくことができるんでしょうか?

保坂先生:できますよ。キューブラー・ロスという精神科医が、人間がどのように死を受け入れていくかに関して「受容モデル」を発表しています(図4)。人間は自分に悪いことが起こった時、否認、怒り、取引、抑うつ、受容といったプロセスを経て、それを受け入れていくと言っています。僕はこの受容への道は階段状に進むのではなく、波線型、つまり受容と否認の間を行ったり来たりしながら受け入れていくと思っています。しかしながら、中にはうまく適応していけない人もいます。がん患者の30-40%は適応障害やうつ病など、何らかの精神疾患を併発すると言われているんです。

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図4 受容への道は行ったり来たりしながら

 

ヒルル:ずいぶん多くの方が、がんになったことで同時に精神的にダメージを受けるんですね。

保坂先生:そうですね。落ち込んでしまうと、本来のがんの治療に差し支えることがあるので、そこの部分を何とかするのが私の仕事です。しかし主治医や家族はなかなか患者のうつ状態に気付きにくいものなんです。最初に申し上げたように、主治医も家族も「まさか自分の患者や家族が精神科的な病気にかかっているはずがない」とか、「がんなんだからこの程度の落ち込みは仕方ない」と考えがちなんです。だから患者は自分が少し変だなと思ったら、かならず主治医に伝えてもらうことが大事な第一歩なんです。そうすれば心の専門家がケアにあたることができるんです。

 

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