患者も家族も、まず自分を知ることが大事! 保坂隆先生 interview_7

精神腫瘍医 保坂 隆先生インタビュー (BY Atsuko MINATO)

 患者も家族も、まず自分を知ることが大事!   保坂隆先生 interview_7


ヒルル:実際に患者や家族がパニックから脱出して病気に前向きに取り組むために、どんな治療をされているのですか?

保坂先生: 認知行動療法  が一番役に立っています。これは、悲観的な考えに陥っている状態をカウンセリングなどで修正する治療法です。例えば落ち込みの原因に関して、

・状況:嫌な出来事が起きた時はどんな時か、状況を分析してみる。

・思考:それについて自分はどう考えたか?

・根拠:なぜそう考えたか?

という順序を追って物事を考え、その考え方を修正する、つまり別の考え方ができるようにガイドします。自分を第三人称化 して、その自分に何とアドバイスするかを考えてみてもらったりします。患者も家族も、できるだけ一つの考えにとらわれず、多様な考えを持てることが重要なんです。

がん患者のうつ病に対しての 認知行動療法 はまだ確立されておらず試行錯誤で行っていますが、効果を感じています。また 認知行動療法 の延長としての イメージ療法 や リラクセーション も役立ちます。具体的に言うと、例えば 抗ガン剤 による 予期嘔吐 (まだ薬を投与していないのに考えただけで吐いてしまう)には 吐き気止め も効かないことがありますが、上記の療法や、催眠療法 を使って止めることができます。

 

ヒルル:薬を使わなくてもできる ことがこんなにあるんですね。

保坂先生:そうですね。患者や家族が うつ状態 になった時、なぜそうなったのか、原因は何か、どういう状況の時に必ずそうなるのかなど、問題の根本に気付くようにガイドします。それがわかれば、悪いニュース や ストレス に心構えをして対処していくことができるからです。患者も家族も、自分のことを分析して、自分をよく知ることが大事なんです。

DrHOSAKA005a.jpg

ヒルル:最後にヒルル読者へのメッセージをいただけますか?

On Oct 13, 2010, at 3:59 pm, 
 精神腫瘍医 保坂 隆 (聖路加国際病院) sent a message;

ヒルル読者の皆様へ
グループ療法 という療法が、私の サイコオンコロジー の仕事の中で大きな仕事だったんですが、グループ療法 で成功するのは 99.9% は 女性の患者 なんです。 男性の患者、たとえば 前立腺がん や 肺がん の患者が集まって グループ療法 が成功した、という論文はないんですよ。 また アルコール依存症 においての グループ療法 の成功率はたったの 3割、グループの力は強大 と言えども、その程度なんです。 ところが 乳がん患者 の グループ療法 は 120%力 を引き出せる。
女性は 助けあったり、お互いをケアする のに適した人たち なんだろうと、思っています。女性のもともとの心の強さ を感じます。 
ヒルル のようなサイトに来れば 助け合える、相手を助ける役割が自分にもある、そういう考え方を持てる というのはすばらしいことだと思います。敬意を表します。

 

 やってみよう! 2分でできるリラクセーションの方法

1.目をつぶり、(全行程、目をつぶって行う)、腹式呼吸を行う

2.両手の拳を握って力を入れ、息を吐きながら拳を解く

3.肩を上げ、息を吐きながらストンと力を抜く

4.全身の筋肉に力を入れ、息を吐きながら力を抜く

5.リラックスした姿勢で、「両手がだんだん温かくなる」とゆっくり何度も自分に言い聞かせる

6.今までに行った楽しいあるいは美しい旅行の風景などをいくつか思い浮かべてみる

7.1から6までゆっくり数える、そして7で目を開ける

注)血圧が下がっているので、急に立ち上がらないこと!

 

「実際に保坂先生のコンサルテーションを受けて」  湊 敦子

保坂先生にお話をうかがって、この3年間で乳がんと子宮全摘を経験した私がうつ状態になったのは、決して珍しいことではないのだと思いました。私が患者として保坂先生の部屋のドアをノックしたのは、乳がんの主治医である聖路加国際病院の矢形先生が子宮全摘後にうつ状態に陥った私の精神状態を心配して、私を保坂先生のところへ送ったことによります。強い精神力を自負していた私も、矢形先生に「女性にとって胸や子宮を失ったり傷つけられたりということは、相当な精神的ダメージを伴う。ナメちゃいけない」と背中を押され、受診することになりました。(聖路加国際病院のブレストセンターではチーム医療に力を入れており、ブレストセンター内にリエゾン精神科医(他の診療科と連携しながら患者のメンタル面をケアすることでチーム医療に貢献する精神科医)を配置しています。)

 

保坂先生のもとで、自分を客観的に分析し、自分の性格、癖、傾向を再認識しました。その上でストレス・コーピング(ストレスへの対処の仕方)やリラクセーションの仕方を具体的に学びました。それは自分のことをよく知り、自分をコントロールし、人生に対して前を向かせる作業に他なりません。

また薬に依存せずに自分自身を取り戻すことができることを教えてくださいました。乳がんのホルモン療法で服用しているタモキシフェン クエン酸塩(TAM)と、今年日本でも発売開始されたSNRI(抗うつ剤)は同じ代謝酵素が関与するため、TAMの抗腫瘍効果が阻害される可能性を否定できませんでした。そこでTAMを活かすために早々にSNRIからの脱薬を試み、他の心療内科では2年間服用が必要と言われていたところを3ヶ月の服用のみで脱薬に成功しました。

 

実際の診療は一回30分(頻度は隔週~1カ月、状態によって違う)で、仲良しのオジサンのところへ遊びに行くようなピクニック気分で出かけます。本や資料を読んだりリサーチの宿題が出るので、そのことについて感じたことを話し合ったりします。保坂先生は読んだりリサーチしたことを私の人生と重ね合わせ、自分で積極的に考えさせ、気付かせてくれます。このようにして私の人生の傍らに寄り添い、暗闇から脱出する手助けをしてくださいました。

 

保坂先生のコンサルテーションを受けるには

保坂先生は現在聖路加国際病院のブレストセンターのリエゾン精神科医なので、コンサルテーションを受けるには、聖路加国際病院のブレストセンター/オンコロジーセンターの患者であることが前提となります。しかし今後はさまざまな相談を受けられるように、診療体制を検討中とのこと。

StLuke_Oncology_Centre.jpg

 

敦子 Atsuko MINATO    プロフィール

外資系IT企業で約20年間「働きマン」のように働いていた矢先、43歳の時に右乳がんを健康診断にて発見される。Stage I で、乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検、放射線治療を経て、現在ホルモン療法中。ホルモン療法が一因で、子宮筋腫が急激に巨大化し、3年後に子宮全摘。病気や離婚など、他人から見ると不運や不幸のオンパレードのような人生で、妹によると「病気のスタンプラリー」に参加しているらしいが、本人はうつ状態も克服し、いたって元気。落ち込んでいる友人に「私の人生と交換するぅ?」と問いかけて励ますのが得意。趣味はドラムとフラワーアレンジメント、真面目な主治医を笑わせること。そして最近はストイックな登山。

ブログ:http://ameblo.jp/acco7/