カウンセリングの「五種の神器」保坂隆先生 interview_5

精神腫瘍医 保坂 隆先生インタビュー (BY Atsuko MINATO)

 カウンセリングの「五種の神器」保坂隆先生 interview_5


ヒルル:患者の気持ちが少しわかったところで、先生が具体的になさっている患者や家族へのカウンセリングの現場をちょっとのぞかせて下さい。

保坂先生:では、私の診察室からご案内しましょうか。診察室には丸いテーブルがあって、どこにおかけいただいてもいいようになっています。昔は四角いテーブルだったんですが、これだと医療者vs患者・家族同盟といった対峙した形になり緊張感が高まってしまうので、丸にしてもらいました。これで医療者と患者と家族が等しい距離で話すことができ、医療者・患者・家族が一体となって病気に立ち向かう環境が出来上がります(図5)。

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図5 医療者・患者・家族が一体となる治療環境の構築

 

ちなみに受診のパターンですが、患者だけが来るケースが8割、患者と家族が一緒に来られるケースが2割です。僕は患者に秘密を持つのはよくないと思っているので、家族だけに話すことはしません。丸テーブルに加えて、パソコン、カレンダー、カルテ、ティッシュペーパーが、僕の「五種の神器」かな?

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ヒルル:パソコンで何をするんですか?

保坂先生:これまで 30 分という短い診療時間の中で、どうやったら 問題解決型 の診療ができるのか考えてきました。それで患者や家族の話をよく聴くという従来の 傾聴共感型 のカウンセリングに加え、問題を解決するプロセスを患者や家族と共有していくスタイルに変更しました。解決したいことに関して、パソコンで一緒に検索して読んだら役に立つページを一緒に探したりします。つまり情報の集め方を教えたり、解決に至る方法を患者や家族が見つけることができるようガイドしていく、というスタイルです。患者や家族がそのページを読んできてくれれば、次回の診療が一歩前に進むでしょ?

 

ヒルル:そうなんですか!ちょっとした工夫なのに、患者や家族の取り組み方はずいぶん変わりますよね。他の神器の使い方は?

保坂先生:カルテは電子カルテに書けない患者の情報、カレンダーは次回の予約日を決めるため、ティッシュペーパーは患者や家族の 涙 のためです。

 

ヒルル:やっぱり泣かれますよね。

保坂先生:そうですね。でも私は 患者や家族が一緒に泣くことは悪いことではない と思うんですよ。昔、ある 30 代のご婦人が定期健診を受けていたにもかかわらず、ある日突然肺がんが見つかり、余命 3カ月を宣告されました。呼吸器内科の医者が告知をするとき、僕も一緒に立ち合いました。告知の時ご主人も一緒で、この日は病室に一緒に泊って行かれました。僕は二人が病室から飛び降りはしまいかと心配で、朝方に様子を見に伺いました。おそらく一睡もせずに朝まで一緒に泣いていたと思われるお二人の目は真っ赤でしたが、お二人は残された時間を大切に過ごす決意を固めたように見えました。ご主人だけに告知していたら、ご主人は家で一人で泣くことになっただろう と思います。一人で泣かず、家族と一緒に泣くことで、より家族の絆も強まっていくように思います。

 


 患者の家族はどうすればよいのか?保坂隆先生 interview_6 につづく