ハイリスクとはどの様に分類されるのでしょうか? シュナベル先生

A interview with Dr. Freya Schnabel, Director of Breast Surgery, NYU Langone Medical Centre.
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  ハイリスクとはどの様に分類されるのでしょうか? 

シュナベル先生: 一番乳がんにかかる可能性の高いハイリスクな女性というのは BRCA1 と BRCA2 という乳がんのリスクを高める遺伝的変異を持つ人です。この様な BRCA1とBRCA2の遺伝子の保持者は一番乳がん罹患リスクが高く、50%から85%の割合で乳がんを発症し、また 16% から 85% の割合で卵巣がんをも発症します。他にもわずかではありますが乳がんを発症する遺伝子があります、しかしながら BRCA1 や BRCA2 ほどのインパクトはありません。次に可能性の高い人は遺伝的変異がない人で 異型過形成 や 非浸潤性小葉がん が認められた人です。組織検査で乳房の細胞に変化が見られることによりそのような症状と診断されます。更には乳がんを発症する人が多い人家系の人はリスクも高まります。乳がん患者とどのくらい家系的に近いか、乳がんが発症した年齢、そのパターンなど様々な因子があります。

How is "high risk" defined?
The highest level of risk is people who have inherited mutations of the BRCA1 and BRCA2 genes. This population is at the top of the pyramid, with a 50 to 85% chance of developing breast cancer, as well as a 16 to 40% risk of ovarian cancer. A few other genes have been identified that are linked to an increase in breast cancer, but the magnitude is not as high as with BRCA1 and BRCA2 mutations. The next tier consists of people who don't have the mutations but have atypical hyperplasia and lobular carcinoma in situ. These are cellular changes in the breast that are diagnosed on tissue biopsy. In addition, women with a strong family history of breast cancer carry a higher risk of the disease. There are a number of factors here: how closely related the family member with breast cancer is, how old the person was at the time of diagnosis, and whether there's a pattern of breast cancer in the family compared with one individual.

 この記事は、BCネットワークのweb site における「新着トピックス」2010年11月、及びNYU ランゴーンメディカルセンターの出版物 『news&viewsSeptember/October 2010 』を許可を得て転載したものです。(もちろん、シュナベル先生にもですよ。ヒルルのみなさんにお役に立てるのなら是非とのことです)

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 BCネットワーク代表 山本眞基子さんから、みんなにメッセージが届いています >>>

 みなさんはじめまして、BCネットワークと言う乳がん患者団体の代表の山本眞基子です。BCネットワークは,ニューヨークで約5年前に30歳代で乳がんになってしまった日本人女性達で設立し,日米両国の日本人女性に向けて乳がん情報を発信している非営利団体です。患者さんや,サバイバー(経験者)の方対象のセミナー、シンポジウムだけでなく,乳がんにならないと確信している女性達にも乳がん早期発見の啓発活動ををおこなっています。電話での元患者さんボランテイアーによるホットラインサポートは日米両国でやっています。日本でのシンポジウムには,日米の著名な乳腺外科医の先生方も講演,トークに来てくださっています。今回のインタビューのシュナベル先生も今年夏7月に横浜に来てくださっていますよ。ヒルルのホームページから横浜でのシンポジウムの紹介をご覧くださいね。乳がんにかかってしまった皆さん、乳がん治療後に絶対再発しないと言う目的のために、色々な役に立つ情報を知って、乳がん治療後のライフは元気に健康にそして楽しく過ごしませんか。乳がんにかかって死ぬかもしれないと思う時期もあったあなただから,より毎日を楽しくイキイキとこれからのライフを過ごせるのだと,BCネットワークの運営メンバー(すべて乳がん経験者)は思っています。

BCネットワークは日本でのサポーター、寄付をお願いしています。2011年夏には,東京と横浜で第3回目の乳がん患者シンポジウムを著名乳腺外科医と開催予定です。

自分達の経験を生かしたいと思う方はBCネットワークへのサポーター登録をしませんか! 寄付もウエルカムです。 

〜NYにて、BCネットワーク代表 山本眞基子


詳細は、BCネットワーク web site; http://bcnetwork.org/
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検査機器は進歩しているのでしょうか? シュナベル先生

A interview with Dr. Freya Schnabel, Director of Breast Surgery, NYU Langone Medical Centre.
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 検査機器は進歩しているのでしょうか? 

シュナベル先生: 乳房のMRI検査は飛躍的に進歩をとげた検査機器の一つです。私たちが使用している機器の中でも一番精密で、マンモグラフィーや触診で発見できなかった乳がんの3%を発見できています。しかしながらマイナスな部分もあります。それは高額で不便であり、造影剤を使用しなければいけないなど面倒な側面や、またある程度の偽陽性の結果が出ることで必要のない組織検査や更なる検査をすることになるからです。結果としてMRIは新しく乳がんにかかった女性でがんが他の場所に浸潤しているかどうか診断したり、乳がんにかかる可能性の高いハイリスクの女性に積極的に使用されています。

Are diagnostic tools getting better?
One of the big advances has been MRI exams of the breast. It's the most sensitive tool we have, picking up about 3% of breast cancers, those that don't show up on mammography or physical examination. But it has a downside: it's expensive, inconvenient, and uncomfortable--it requires use of a contrast agent--and it gives a number of false positives, which trigger unnecessary biopsies and follow-up exams. As a result, it's used primarily in newly diagnosed women to evaluate the extent of malignancy and in women at very high risk of developing the disease.

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生存率は良くなっているのでしょうか? シュナベル先生

A interview with Dr. Freya Schnabel, Director of Breast Surgery, NYU Langone Medical Centre.
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生存率は良くなっているのでしょうか?

シュナベル先生: 転移性がん患者を含めてどのステージに属す患者さんも生存率は良くなっています。1520年前は今に比べて医師としてできることが限られていました。どちらにしても乳がんと戦う一番良い方法は早期発見です。

Are survival rates improving?

Yes, in every category, including among women with metastatic disease. Fifteen or 20 years ago, we didn't
have much to offer them. That's not the case now. Still, the best weapon we have is early detection.

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乳がんはアメリカで蔓延しているのでしょうか? シュナベル先生(NYU ランゴーンメディカルセンター)

A interview with Dr. Freya Schnabel, Director of Breast Surgery, NYU Langone Medical Centre.
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ヒルルにも出演してくれたシュナベル先生。これから7回にわたり、乳がんのことをもっと知りたいという人たちのために「Q&A」形式で答えて頂くことになりました。ニューヨークから最前線で治療にあたっているシュナベル先生の interview をお届けします。

 

 乳がんはアメリカで蔓延しているのでしょうか? 

シュナベル先生: 長い間乳がん患者の数は増加の一方でした。それはマンモグラフィー検診が普及した事と関係しているでしょう。2004年には初めて乳がんの発症率が少しですが下がりました。これはホルモン補充療法(HRT)を中止する女性達がいたことと関係しているかもしれないと考えます。しかしながら乳がんは女性の9 1人がかかる非常にありふれた病気であり続けています。

Does this country have an epidemic of breast cancer?

For a number of years, we saw a big incremental increase in breast cancer cases, but a percentage of that had to do with widespread mammography screening. In 2004, for the first time, we actually saw a small decrease in the number of cases being diagnosed. We think that may be a result of some women stopping hormone replacement therapy. Breast cancer remains, though, a very common disease, affecting one in nine women.

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患者も家族も、まず自分を知ることが大事! 保坂隆先生 interview_7

精神腫瘍医 保坂 隆先生インタビュー (BY Atsuko MINATO)

 患者も家族も、まず自分を知ることが大事!   保坂隆先生 interview_7


ヒルル:実際に患者や家族がパニックから脱出して病気に前向きに取り組むために、どんな治療をされているのですか?

保坂先生: 認知行動療法  が一番役に立っています。これは、悲観的な考えに陥っている状態をカウンセリングなどで修正する治療法です。例えば落ち込みの原因に関して、

・状況:嫌な出来事が起きた時はどんな時か、状況を分析してみる。

・思考:それについて自分はどう考えたか?

・根拠:なぜそう考えたか?

という順序を追って物事を考え、その考え方を修正する、つまり別の考え方ができるようにガイドします。自分を第三人称化 して、その自分に何とアドバイスするかを考えてみてもらったりします。患者も家族も、できるだけ一つの考えにとらわれず、多様な考えを持てることが重要なんです。

がん患者のうつ病に対しての 認知行動療法 はまだ確立されておらず試行錯誤で行っていますが、効果を感じています。また 認知行動療法 の延長としての イメージ療法 や リラクセーション も役立ちます。具体的に言うと、例えば 抗ガン剤 による 予期嘔吐 (まだ薬を投与していないのに考えただけで吐いてしまう)には 吐き気止め も効かないことがありますが、上記の療法や、催眠療法 を使って止めることができます。

 

ヒルル:薬を使わなくてもできる ことがこんなにあるんですね。

保坂先生:そうですね。患者や家族が うつ状態 になった時、なぜそうなったのか、原因は何か、どういう状況の時に必ずそうなるのかなど、問題の根本に気付くようにガイドします。それがわかれば、悪いニュース や ストレス に心構えをして対処していくことができるからです。患者も家族も、自分のことを分析して、自分をよく知ることが大事なんです。

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ヒルル:最後にヒルル読者へのメッセージをいただけますか?

On Oct 13, 2010, at 3:59 pm, 
 精神腫瘍医 保坂 隆 (聖路加国際病院) sent a message;

ヒルル読者の皆様へ
グループ療法 という療法が、私の サイコオンコロジー の仕事の中で大きな仕事だったんですが、グループ療法 で成功するのは 99.9% は 女性の患者 なんです。 男性の患者、たとえば 前立腺がん や 肺がん の患者が集まって グループ療法 が成功した、という論文はないんですよ。 また アルコール依存症 においての グループ療法 の成功率はたったの 3割、グループの力は強大 と言えども、その程度なんです。 ところが 乳がん患者 の グループ療法 は 120%力 を引き出せる。
女性は 助けあったり、お互いをケアする のに適した人たち なんだろうと、思っています。女性のもともとの心の強さ を感じます。 
ヒルル のようなサイトに来れば 助け合える、相手を助ける役割が自分にもある、そういう考え方を持てる というのはすばらしいことだと思います。敬意を表します。

 

 やってみよう! 2分でできるリラクセーションの方法

1.目をつぶり、(全行程、目をつぶって行う)、腹式呼吸を行う

2.両手の拳を握って力を入れ、息を吐きながら拳を解く

3.肩を上げ、息を吐きながらストンと力を抜く

4.全身の筋肉に力を入れ、息を吐きながら力を抜く

5.リラックスした姿勢で、「両手がだんだん温かくなる」とゆっくり何度も自分に言い聞かせる

6.今までに行った楽しいあるいは美しい旅行の風景などをいくつか思い浮かべてみる

7.1から6までゆっくり数える、そして7で目を開ける

注)血圧が下がっているので、急に立ち上がらないこと!

 

「実際に保坂先生のコンサルテーションを受けて」  湊 敦子

保坂先生にお話をうかがって、この3年間で乳がんと子宮全摘を経験した私がうつ状態になったのは、決して珍しいことではないのだと思いました。私が患者として保坂先生の部屋のドアをノックしたのは、乳がんの主治医である聖路加国際病院の矢形先生が子宮全摘後にうつ状態に陥った私の精神状態を心配して、私を保坂先生のところへ送ったことによります。強い精神力を自負していた私も、矢形先生に「女性にとって胸や子宮を失ったり傷つけられたりということは、相当な精神的ダメージを伴う。ナメちゃいけない」と背中を押され、受診することになりました。(聖路加国際病院のブレストセンターではチーム医療に力を入れており、ブレストセンター内にリエゾン精神科医(他の診療科と連携しながら患者のメンタル面をケアすることでチーム医療に貢献する精神科医)を配置しています。)

 

保坂先生のもとで、自分を客観的に分析し、自分の性格、癖、傾向を再認識しました。その上でストレス・コーピング(ストレスへの対処の仕方)やリラクセーションの仕方を具体的に学びました。それは自分のことをよく知り、自分をコントロールし、人生に対して前を向かせる作業に他なりません。

また薬に依存せずに自分自身を取り戻すことができることを教えてくださいました。乳がんのホルモン療法で服用しているタモキシフェン クエン酸塩(TAM)と、今年日本でも発売開始されたSNRI(抗うつ剤)は同じ代謝酵素が関与するため、TAMの抗腫瘍効果が阻害される可能性を否定できませんでした。そこでTAMを活かすために早々にSNRIからの脱薬を試み、他の心療内科では2年間服用が必要と言われていたところを3ヶ月の服用のみで脱薬に成功しました。

 

実際の診療は一回30分(頻度は隔週~1カ月、状態によって違う)で、仲良しのオジサンのところへ遊びに行くようなピクニック気分で出かけます。本や資料を読んだりリサーチの宿題が出るので、そのことについて感じたことを話し合ったりします。保坂先生は読んだりリサーチしたことを私の人生と重ね合わせ、自分で積極的に考えさせ、気付かせてくれます。このようにして私の人生の傍らに寄り添い、暗闇から脱出する手助けをしてくださいました。

 

保坂先生のコンサルテーションを受けるには

保坂先生は現在聖路加国際病院のブレストセンターのリエゾン精神科医なので、コンサルテーションを受けるには、聖路加国際病院のブレストセンター/オンコロジーセンターの患者であることが前提となります。しかし今後はさまざまな相談を受けられるように、診療体制を検討中とのこと。

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敦子 Atsuko MINATO    プロフィール

外資系IT企業で約20年間「働きマン」のように働いていた矢先、43歳の時に右乳がんを健康診断にて発見される。Stage I で、乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検、放射線治療を経て、現在ホルモン療法中。ホルモン療法が一因で、子宮筋腫が急激に巨大化し、3年後に子宮全摘。病気や離婚など、他人から見ると不運や不幸のオンパレードのような人生で、妹によると「病気のスタンプラリー」に参加しているらしいが、本人はうつ状態も克服し、いたって元気。落ち込んでいる友人に「私の人生と交換するぅ?」と問いかけて励ますのが得意。趣味はドラムとフラワーアレンジメント、真面目な主治医を笑わせること。そして最近はストイックな登山。

ブログ:http://ameblo.jp/acco7/

   


患者の家族はどうすればよいのか? 保坂隆先生 interview_6

精神腫瘍医 保坂 隆先生インタビュー (BY Atsuko MINATO)

 患者の家族はどうすればよいのか?保坂隆先生 interview_6


ヒルル:家族の絆が最後まで強まっていくのは、素敵なことですね。

保坂先生:素敵なだけじゃなくて、本当に効果があるんですよ。家族、友人、同僚など患者をとりまく人々から得られるサポートをソーシャル・サポートと言いますが、このソーシャル・サポートのある/なし、量の多さで病気の予後が変わるんです。家族との強い絆や患者同士の支え合いはがんの経過にいい影響を与えますし、主治医とフランクに話せたりソーシャル・サポートのあるがん患者の方が、ない患者より長生きします。家族の思いやりや愛情が、がん患者を助けるんです。

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ヒルル:でも家族も精神的にも肉体的にも大変な状況ですよね。家族はどうしたいいんでしょう?

保坂先生:そうですね。意外にもがん患者の方が元気で、家族の方がまいっているケースも多いんですよ。一般的に家族の病気を受け入れるスピードは、患者より遅いんです。「私よりも主人をサポートしてあげて下さい。かなりショックを受けてるみたいですから」とおっしゃる乳がん患者が多かったりします。患者の家族は心配と疲労で、免疫機能は低下するし、病気やうつ病になる可能性が高くなっています。そこで患者同様、家族にもリラクセーションを取り入れてもらっています。これは腹式呼吸、筋弛緩法、自律訓練とイメージ療法を使った方法で、自分で自律神経をある程度コントロールすることで、リラックスし、落ち着きを得、よく眠れるようになります。ストレスには許容量があります。許容量を超えて爆発しないよう、ストレスの量を減らしたり、許容量を増やしたり、発散チャンネルを増やしたり、工夫することができます。

 

 患者も家族も、まず自分を知ることが大事  保坂隆先生 interview_7  につづく



カウンセリングの「五種の神器」保坂隆先生 interview_5

精神腫瘍医 保坂 隆先生インタビュー (BY Atsuko MINATO)

 カウンセリングの「五種の神器」保坂隆先生 interview_5


ヒルル:患者の気持ちが少しわかったところで、先生が具体的になさっている患者や家族へのカウンセリングの現場をちょっとのぞかせて下さい。

保坂先生:では、私の診察室からご案内しましょうか。診察室には丸いテーブルがあって、どこにおかけいただいてもいいようになっています。昔は四角いテーブルだったんですが、これだと医療者vs患者・家族同盟といった対峙した形になり緊張感が高まってしまうので、丸にしてもらいました。これで医療者と患者と家族が等しい距離で話すことができ、医療者・患者・家族が一体となって病気に立ち向かう環境が出来上がります(図5)。

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図5 医療者・患者・家族が一体となる治療環境の構築

 

ちなみに受診のパターンですが、患者だけが来るケースが8割、患者と家族が一緒に来られるケースが2割です。僕は患者に秘密を持つのはよくないと思っているので、家族だけに話すことはしません。丸テーブルに加えて、パソコン、カレンダー、カルテ、ティッシュペーパーが、僕の「五種の神器」かな?

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ヒルル:パソコンで何をするんですか?

保坂先生:これまで 30 分という短い診療時間の中で、どうやったら 問題解決型 の診療ができるのか考えてきました。それで患者や家族の話をよく聴くという従来の 傾聴共感型 のカウンセリングに加え、問題を解決するプロセスを患者や家族と共有していくスタイルに変更しました。解決したいことに関して、パソコンで一緒に検索して読んだら役に立つページを一緒に探したりします。つまり情報の集め方を教えたり、解決に至る方法を患者や家族が見つけることができるようガイドしていく、というスタイルです。患者や家族がそのページを読んできてくれれば、次回の診療が一歩前に進むでしょ?

 

ヒルル:そうなんですか!ちょっとした工夫なのに、患者や家族の取り組み方はずいぶん変わりますよね。他の神器の使い方は?

保坂先生:カルテは電子カルテに書けない患者の情報、カレンダーは次回の予約日を決めるため、ティッシュペーパーは患者や家族の 涙 のためです。

 

ヒルル:やっぱり泣かれますよね。

保坂先生:そうですね。でも私は 患者や家族が一緒に泣くことは悪いことではない と思うんですよ。昔、ある 30 代のご婦人が定期健診を受けていたにもかかわらず、ある日突然肺がんが見つかり、余命 3カ月を宣告されました。呼吸器内科の医者が告知をするとき、僕も一緒に立ち合いました。告知の時ご主人も一緒で、この日は病室に一緒に泊って行かれました。僕は二人が病室から飛び降りはしまいかと心配で、朝方に様子を見に伺いました。おそらく一睡もせずに朝まで一緒に泣いていたと思われるお二人の目は真っ赤でしたが、お二人は残された時間を大切に過ごす決意を固めたように見えました。ご主人だけに告知していたら、ご主人は家で一人で泣くことになっただろう と思います。一人で泣かず、家族と一緒に泣くことで、より家族の絆も強まっていくように思います。

 


 患者の家族はどうすればよいのか?保坂隆先生 interview_6 につづく



患者はどのようにがんを受け入れていくのか?保坂隆先生interview_4

精神腫瘍医 保坂 先生 インタビュー (BY Atsuko MINATO)

 患者はどのようにがんを受け入れていくのか?保坂隆先生 interview_4


ヒルル:告知された患者の心の内を家族も知りたいと思うのですが、教えていただけますか。

保坂先生:根源には「怒り」があります。「どうして自分が、がんにならなければいけないんだ!」という怒りです。この怒りが内側に向くか外側に向くかで、表現が変わってきます。内側に向く場合は、「あの時ああすればよかった」「早く受診すればよかった」といった自責や後悔の念にさいなまれます。外側に向くと、「あの医者はどうして早く見つけてくれなかったんだ」「酒やたばこをやっている夫の方ががんにならないで、どうして私が!?」といった周囲への八つ当たりとなって表れます。

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ヒルル:それでも自分の病気を受け入れて前向きに取り組んでいくことができるんでしょうか?

保坂先生:できますよ。キューブラー・ロスという精神科医が、人間がどのように死を受け入れていくかに関して「受容モデル」を発表しています(図4)。人間は自分に悪いことが起こった時、否認、怒り、取引、抑うつ、受容といったプロセスを経て、それを受け入れていくと言っています。僕はこの受容への道は階段状に進むのではなく、波線型、つまり受容と否認の間を行ったり来たりしながら受け入れていくと思っています。しかしながら、中にはうまく適応していけない人もいます。がん患者の30-40%は適応障害やうつ病など、何らかの精神疾患を併発すると言われているんです。

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図4 受容への道は行ったり来たりしながら

 

ヒルル:ずいぶん多くの方が、がんになったことで同時に精神的にダメージを受けるんですね。

保坂先生:そうですね。落ち込んでしまうと、本来のがんの治療に差し支えることがあるので、そこの部分を何とかするのが私の仕事です。しかし主治医や家族はなかなか患者のうつ状態に気付きにくいものなんです。最初に申し上げたように、主治医も家族も「まさか自分の患者や家族が精神科的な病気にかかっているはずがない」とか、「がんなんだからこの程度の落ち込みは仕方ない」と考えがちなんです。だから患者は自分が少し変だなと思ったら、かならず主治医に伝えてもらうことが大事な第一歩なんです。そうすれば心の専門家がケアにあたることができるんです。

 

  カウンセリングの「五種の神器」保坂隆先生interview5  につづく



がん告知する?しない? 保坂隆先生 interview_3

精神腫瘍医 保坂 先生 インタビュー (BY Atsuko MINATO)

  がん告知する?しない? 保坂隆先生 interview_3

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ヒルル:患者の心の動きを知った上で、家族としてどうサポートしていったらいいのかを、時系列で考えてみたいと思いますがお手伝いいただけますか?まず家族が最初にぶち当たる壁が、患者本人に病名を告知すべきかどうか、というところだと思います。

保坂先生:がん告知について少しお話をしましょう。日本での患者ご本人へのがん告知率は1990年代に30%でしたが、20093月の厚生労働省の報告によると病名告知は65.9%、余命告知は30.1%でした。(出典:厚生労働科学研究費補助金「わが国の尊厳死に関する研究」平成18年度総括・分担研究報告書(主任研究者:松島英介)

医師も医学部で告知の仕方を学んだことはなかったし、まず家族に伝えるのが普通で、本人に対する告知は家族が「主人は気が小さいから伝えないで」といった状況を優先する消極的な告知時代が長く続いてきました。

 

ヒルル:自分の病気のことなのに、患者本人に伝えられていなかったんですね。

保坂先生:それによって患者と家族の状態がどうなるかというと、家族は患者に秘密を持つことになり、その秘密を守るために家族は嘘をつき続けなくてはならなくなる。「患者・家族同盟」にヒビが入りますね(図1)。医師も患者に対して嘘をつかなくてはいけないので、患者と医師との信頼関係も危ういものになります。患者は、医者が嘘をついている、家族が本当のことを話してくれないことに必ず気付きます。そして疑心暗鬼になり、医師や家族を信頼できなくなります。

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図1 告知を家族だけにすると、患者・家族同盟にヒビが入る

 

ヒルル:告知しないことにまつわる患者と家族のストレスは大きそうだし、悪循環ですね。しかも必ず嘘はバレる・・・

保坂先生:どう告知するかは、医師の価値観と患者の家族関係という二つの変数で微妙に変化します。しかし本来自分の病名は本人が知るべき「第一級の個人情報」で、患者本人ではなくて家族が先に知るということはおかしなことです。医師も家族に知らせただけで責任を果たしたと思うべきではないと思います。それは「悪いニュース」を伝えるというストレスや責任を家族に押し付けているのと同じです。

 

ヒルル:でも告知された時の患者さんが被る精神的ダメージは大きいですよね。

保坂先生:1990年代半ばに日本とアメリカの医師に対して、がんの告知で患者の自殺願望が強くなると思うか、という意識調査をしました。1960年代後半から100%告知を実践しているアメリカの医師は、「ときどきあるが、そんなことは滅多にない」と思っています(図2)。

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図2 がんの告知で患者の自殺願望が強くなると思うか?医師への調査

 

私も告知しないことが患者を精神的ダメージから守っているのかと疑問に思い、耳鼻科系のがん患者に調査をしたところ(図3)、告知されてもされなくても、精神状態に大差はないということがわかりました。つまり真実を告げないことが、患者の気持ちを楽にしたり、よい精神状態に持っていくことはないということです。

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図3 告知しないことが患者の気持ちを楽にするわけではない

 

 患者はどのようにがんを受け入れていくのか?保坂隆先生 interview_4 につづく



 

サイコオンコロジーってなに? 保坂隆先生 Interview_2

精神腫瘍医 保坂 先生 インタビュー (BY Atsuko MINATO)

 サイコオンコロジーってなに? 保坂隆先生 interview_2


ヒルル:先生の標榜する科の名称として「サイコオンコロジー」とか、「リエゾン精神医学」とかありますが、保坂先生は何の先生なんですか?

保坂先生:基本的には精神科医です。その中でも リエゾン精神医学 を専攻してきました。リエゾン精神医学とは、他の診療科と連携を取りながらチーム医療に貢献する臨床形態のことです。一方、サイコオンコロジーとは、サイコ(Psycho=心理、精神)とオンコロジー(Oncology=腫瘍学)から成る言葉で、日本語では「精神腫瘍学」などと言われています。がん が心に与える影響や、心が がん に与える影響を研究する学問です。リエゾン精神医学のなかで、がん領域に特化したものが サイコオンコロジー( Psycho - Oncology =精神腫瘍学) です。

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ヒルル:サイコオンコロジストでリエゾン精神科医の保坂先生は、具体的にどのようにがん患者とかかわっているのですか?

保坂先生:まず、がん患者の3-4割には何らかの精神障害が合併していて、一番多いのが 適応障害 と うつ病 なんです。がん患者は がん にかかったことに対するやり場のない怒りを、後悔や自責の念を抱いたり、周囲へ八つ当たりして発散します。しかし主治医や家族は「がんになったのだから落ち込むのも無理はない」、あるいは「うつ病になるはずはない(なってほしくない)」と思いがちで、発見が遅れがちなんです。一方で、がんへの対処の仕方とがんの予後に関しての研究によれば、絶望的になる人々は免疫機能が低下しがんの進行が速くなって再発率や死亡率が高いんですが、前向きにがんに立ち向かう人々は余命が長くなるわけではないとしてもQOLQuality of Life、生活の質)が高い、つまり楽しく有意義な生活を送ることができる、ということがわかっています。

そのような意味で、私の仕事は、がん患者のQOLが少しでも高くなるよう心のサポートをし、そして第二の患者といわれる家族の心のケアを行うことなんです。

 

  がん告知する?しない?  保坂隆先生 interview_3  につづく


 

家族は「第二の患者」 保坂隆先生 interview_1

精神腫瘍医 保坂 先生(聖路加国際病院)インタビュー (BY Atsuko MINATO)

 家族は「第二の患者」 保坂隆先生 interview_1


ヒルル:がんを告知された患者さんのご家族が、ヒルルに投稿をよせてくれた[あいまま]さんのご家族のように、落ち込んでしまうことは珍しくありません。思いもかけないことで、どうしていいかわからなくなってしまうようです。

保坂先生:がん患者の家族は「第二の患者」と呼ばれるんですよ。通常は介護や看護で疲れ果ててしまい健康を損ねてしまうという意味ですが、がんの場合、家族には矛盾する二つの側面があるから余計に疲れてしまうんです。

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ヒルル:矛盾する二つの側面って何ですか?

 保坂先生:ひとつは、大切な人を失ってしまうかもしれないという悲しい気持ち(専門的には予期悲嘆といいます)。もうひとつは、それでいて患者本人を頑張らせなければいけない治療者的な役割を、家族は同時に負っているんです。だから混乱もするし、心身の疲労が増すのです。


ヒルル:そんな家族が患者と一緒にどうやったらがんに向き合っていけるのか、がんと心の研究をされている保坂先生にお聞きしたいと思います。

 サイコオンコロジー, ってなに? 保坂隆先生 interview_2 につづく、



「大切な家族ががんに・・・どうしよう?」保坂隆先生(聖路加国際病院)インタビュー

精神腫瘍医 保坂 隆 先生(聖路加国際病院)インタビュー (BY Atsuko MINATO)

"すばらしい記事ですね。日本人の3人に一人はがんになると言われており、そのご家族を考えれば、どなたでも身近に経験する内容かと思います。保坂先生もすばらしいご活動をされているようで、このヒルルの記事で救われる方は多いのではないかと思います" 
仲本光一先生(外務省医務官、ジャムズネット東京代表)

"精神的に落ち込むのは、がん患者だけでなく、がん患者の家族も精神的に落ち込んでしまう事も多いという事実を初めて教えてくれたインタビューです。ヒルルさんのサイトに Thank you です" 
山本眞基子氏(BCネットワークJapan代表)

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ヒルル:がんを告知された患者さんのご家族が、このように落ち込んでしまうことは珍しくありません。思いもかけないことで、どうしていいかわからなくなってしまうようです。

 これから7回にわたって、そんな家族が患者と一緒にどうやったらがんに向き合っていけるのか、「がんと心」の研究をされている聖路加国際病院 ブレストセンター/オンコロジーセンター  精神腫瘍医の保坂隆先生にお聞きしたいと思います。

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■ 保坂 (ほさか たかし) 先生 

精神腫瘍医

聖路加国際病院 ブレストセンター/オンコロジーセンター サイコオンコロジー

聖路加看護大学院臨床教授 

詳しくはヒルルサイト内「先生紹介」

contents;

 家族は「第二の患者」 保坂隆先生 interview_1

がんの場合、家族には矛盾する二つの側面がある


 サイコオンコロジーってなに? 保坂隆先生 interview_2

精神腫瘍学と、リエゾン精神医学

 

  がん告知する?しない? 保坂隆先生 interview_3

告知を家族だけにすると、患者・家族同盟にヒビが入る

がんの告知で患者の自殺願望が強くなると思うか?医師への調査

告知しないことが患者の気持ちを楽にするわけではない

 

 患者はどのようにがんを受け入れていくのか?保坂隆先生 interview_4

「どうして私が!?」といった周囲への八つ当たりなど、根源には「怒り」

受容への道は行ったり来たりしながら

 

 カウンセリングの「五種の神器」保坂隆先生 interview_5

医療者・患者・家族が一体となって病気に立ち向かう環境

 

 患者の家族はどうすればよいのか?保坂隆先生 interview_6

ソーシャル・サポートのある/なしで病気の予後が変わる

意外にもがん患者の方が元気で、家族の方がまいっているケース患者

 

 患者も家族も、まず自分を知ることが大事  保坂隆先生 interview_7

問題の根本に気づくようにガイドする

ヒルルユーザーへのメッセージ

 「実際に保坂先生のコンサルテーションを受けて」(湊 敦子)

乳がんと子宮全摘を経験した私がうつ状態になったのは、決して珍しいことではなかった

自分を客観的に分析し、自分の性格、癖、傾向を再認識

ストレスへの対処の仕方やリラクセーションの仕方を具体的に学ぶ

薬に依存せずに自分自身を取り戻すことができる

保坂先生のコンサルテーションを受けるには


 家族は「第二の患者」 保坂隆先生 interview_1  につづく