「BCネットワーク第2回乳がんシンポジウム@横浜」リポート

2010年7月10日(土)、「はまぎんホール ヴィアマーレ」において、「BCネットワーク第2回乳がんシンポジウム@横浜」が開催された。

100804_01.gifBCネットワークは、NY在住日本人女性たちが設立した、乳がん患者団体(NPO)。基調講演では、代表・山本真基子さんの執刀医でもあり、現在NYで活躍するシュナベル先生(ニューヨーク大学・乳腺外科部長)が、患者力の大切さについて語った。

医療史の中では、「患者教育」は新しい出来事
 シュナベル先生は、まず人類がヒトの身体を解明してきた歴史、そして医療の歴史を振り返り、「患者への教育が始まったのは19世紀の終わりから20世紀のはじめにかけて」と説明。当時のポスターや新聞の見出しをひきあいに出しながら「ばい菌が病気の原因になることがわかると、医師は一般の人々に『衛生管理が病気の予防になる』と教えるようになった。これが患者教育の始まり」とした。

それ以前の医者は「一般の人は生物学や医学について知らなくて当然」と認識していた。しかし、コレラや黄熱病などの原因となる菌が発見され、その予防には衛生管理が効果的だということがわかると、医療の知識が人々に公開されるようになったのである。
糖尿病や心臓病で患者教育の効果が明らかに
 患者が病気について知ることで、病を予防したり症状を緩和したりできるという例は伝染病に限らない。その代表的な例が、糖尿病や心臓病だ。

 食事の改善や運動は、こうした病気に有効である。医師は患者のライフスタイルについて知り、食事や運動を指導し、患者の側は医師の指示に従って実践していくようになった。つまり、医者と患者のコミュニケーションは、ますます重視されるようになった。 「アメリカでは1970年代にこうした患者教育が始まり、血管病ではおおいに成果を上げてきました」とシュナベル先生。こうして、病に対応するには、医師と患者の対話が大切という意識が育っていった。
患者の権利であるインフォームド・コンセント
20世紀のアメリカでは、個人の権利を尊重しようとさまざまな社会運動が起こり、患者権利法も施行された。この法律では、患者には「どんな病なのか」「誰が治療するのか」「どんな治療をするのか」などといったことを知る権利があるとしている。

これにもとづいて義務付けられているのが、インフォームド・コンセント。患者は医師から病気の性質や治療方法などについて説明を受け、理解したうえで同意する。つまりコミュニケーションがなければ、インフォームド・コンセントは成立しない。
ただし「Don't Tell Mama Syndrome(ママには言わないで症候群)」という言葉があるように、がん患者などの場合は家族が本人に告知したがらないというケースもある。

100804_02.jpgシュナベル先生は「私が新米医師の頃は、患者に正しい情報を与えないことは絶対に間違いだと感じていた。でも、現在ではそうとは限らないということもわかっている」としたうえで、「患者は自分の病状についての情報が不十分だと、実際よりも悪いほうに考える傾向がある。しかし完全に情報を得られれば医師との信頼関係が築かれ、積極的に治療に参加できる。また、余計な不安などのストレスを受けにくい。自分に何が起きているのかをよく理解している患者は、副作用にもよく対処できる」と述べた。

医師と患者のコミュニケーションを円滑にするには
 「治療をうまく進めるには、医師は患者とよくコミュニケーションを取る必要がある」として、シュナベル先生は4つのポイントを掲げた。その4つとは、「1明確さ(患者が明らかに理解している状態にする)、2誠実さ(真実を述べ、患者には医師が知っていることを知らせる)、3現実的な期待(「絶対に大丈夫」などと安易なことは述べない)、4希望を与える(どんな状況にあっても患者を勇気づける)」である。

 こうしたコミュニケーションは、医師からの努力だけでなく、患者の積極的な参加によって初めて意味をなす。「乳がん治療はとくに、さまざまな方法があり複雑です。それらの治療法の内容、リスク、利点、副作用のほか、どのような代替療法があるのかといったことについても、患者がよく理解したうえで、治療方法の決定がなされるべきです」。つまり、患者が自身の病気について知ることは、治療の基盤となるのだ。
患者が自分たちで声を上げることも大切
 アメリカでは乳がん患者団体の活動が活発である。また、乳がんであることをカミングアウトする女性アーティストたちが登場するなど、雑誌やテレビなどでも乳がんについて声高に語ろうという動きが目立っている。「こうした女性たちの努力は素晴らしい。私たちは声高になりすぎるということはない」とシュナベル先生。

 そして「世界中の医師、科学者、そして女性たちが一丸となって力を合わせ、次世代のすべての女性の人生から、乳がんの脅威が取り除かれることを期待しています」と力強く述べた。
ヒルル読者へのメッセージ
100804_03.jpg 講演後、ヒルルのサイトを見たシュナベル先生は「ステキ! 日本語はわからないけれども、こういうサイトから乳がんなどの情報を得られるのは素晴らしい」と感想を述べてくださった。
 またヒルルの読者に対しては「病気と共にあるのは患者自身。主治医でもずっと24時間手助けすることはできません。だからこそ、知識を得て患者力を育ててほしい」とメッセージをくださった。「知恵と力を得た患者は、自分の病気に責任を持ち、自ら治療に参加できます。それがより良い結果を生むはずです」。

取材協力先;
BCネットワークJapan pink.gif
ジャムズネット東京 green.gif