「卵巣がんはどのように診断されるの?」 「チョコレート嚢腫ってがんになる?」 滝澤憲 先生(がん研有明病院病院)

(第3回 がん研有明病院瀧澤先生インタビュー)

診断が難しい、組織診断できない"がん"



卵巣がんの診断は、腫瘍マーカー、MRIやCTなどの一般的ながん検査に加え、子宮内腔の細胞を採取する細胞診などによって判断されます。

経膣超音波検査(エコー)の精度が高まったことで、かなりの確率で卵巣がんであることが確かめられるようになりましたが、実は手術をして組織を病理検査するまでは、がんかどうかはわからないのです。

卵巣に直接針を刺して細胞を抜き取ることができれば、手術前にがんかどうかを診断できるのですが、それは"やってはいけないこと"とされています。まだ破裂していない卵巣腫瘍に針を指した場合、針穴から内容物や細胞がこぼれてしまう危険があるからです。

卵巣がんの検査でありながら、子宮内腔の細胞診断をするのはそのためです。卵巣のがんや腹水は、卵管を通って子宮内に入り込んでくるので、がんがある程度大きい場合、1/3以上は、この子宮内腔細胞診でわかります。

このように卵巣がんの診断・早期発見はとても難しく、「たぶん卵巣がんであろう」という「疑診」のもとで手術・治療が行われます。

100127_2.jpg真興交易医書出版部
心配しないでいいですよ 再発・転移子宮がん
瀧澤 憲 (著)
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■チョコレート嚢腫は、必ず定期観察を!
近年「チョコレート嚢腫ががん化する確率」や「どの段階で手術をしたら予防できるのか」を調査する試みがはじまっていますが、まだはっきりとした調査結果はでていません。
完全な証明はされていませんが、現在のところ5cm以上のチョコレート嚢腫が10年ほどの間にがん化する確率は、5%以上ではないかといわれています。

チョコレート嚢腫は日本人女性の14~15人にひとり、不妊症の人の3人にひとりが患っている病気です。チョコレート嚢腫自体は良性の卵巣腫瘍ですが、年数を経て将来的に、類内膜(るいないまくせい)腺がんや明細胞(めいさいぼう)がんに変化する危険性を秘めています。

100127_3.jpg現在の婦人科の方針では、予防の意味でも、ある程度の大きさ(5~7cm位)になった場合は、早い段階で手術するのが好ましいと考えています。
卵巣がん発生のピークは50歳台ですから、閉経後にチョコレート嚢腫らしいものが見つかれば、大きくなっていない場合でも切除した方がいいでしょう。
しかし、これから結婚・出産を控える若い世代にとっては、非常にデリケートな問題ですし、出産後にチョコレート嚢腫がなくなるケースもないわけではありません。すぐに手術を考える必要はありませんが、大きくなっていないか、定期的な経過観察は怠らないようにしてください。

乳がんの治療はどこまで? 乳がんの治療はどこまで? 乳房温存・切除手術〜最新の乳房再建手術 土井卓子 先生(湘南記念病院)

(第3回 湘南記念病院 かまくら乳がんセンター 土井卓子先生インタビュー)

■乳房温存手術と乳房切除手術
ka1.jpg乳がんの治療は、ステージ(がんの進行具合、ステージ0~Ⅳ期にわけられる)や、がんのタイプによって大きく異なります。
近年では、部分的に手術する「乳房温存術」が主流で、約60%を占めますが、たとえステージ0期でも広がりやすいタイプのがんであった場合、再発を心配される場合には、乳房すべてを摘出する「乳房切除術」が選択されます。

近年では、抗がん剤などを一定期間投与後、しこりを小さくしてから乳房温存術を行う場合もあります。女性にとって、乳房を失うのは精神的にも苦痛をともないます。

そのため、多くの患者さんは「できれば、乳房温存療法を」と希望されますが、乳房切除術にも、再発・転移の危険性が低くなる、術後に放射線照射をしなくて済むなどのメリットがあります。

乳房を全摘した胸のままでも、日常生活に支障はありません。補正下着などもあるので、おしゃれも楽しめます。

それでも、人目を気にせずに温泉に入りたい、乳房のない自分を受け入れられないといった場合には、「乳房(にゅうぼう)再建手術」があります。

  ■最新の乳房再建手術とは?

 乳房再建手術では、胸の筋肉の下にテイッシュエキスパンダーという水の入ったパッドを埋め込み、日数をかけて水を注入して大胸筋を伸ばし、最終的にはシリコンを入れます。

乳頭は形成し、アートメイクで色をつけます。病院によっては、テイッシュエキスパンダー留置は乳がんの手術と同時にできます。術後年数が経過していてもできるので、よく検討してからでも遅くはありません。

ka2.jpg温存療法でも、しこりのある部分は手術で切り取られるので、乳房にへこみができたり、治癒の過程での癒着で引きつれたりといった変形の可能性があります。

その場合も、自分の脂肪組織の元になる幹細胞を分離して注入するなど、さまざまな乳房再建方法があるので、
ひとりで悩まずにぜひ専門医に相談してください。

※ 執刀医であり、かつ、一人の女性でもある土井先生からヒルルユーザーにメッセージを頂けますでしょうか。

 自分の体を鏡に映してよく見る、さわる、検診で調べる。乳房に対し、自分の体に対し、どうぞ 「いとおしい」 という気持ちを持って、乳がんを予防・治療してください。


「卵巣がんにはどんな種類があるの?」「年齢によって症状は違うの?」 滝澤憲 先生(がん研有明病院)

(第2回 がん研有明病院 瀧澤先生インタビュー)

■症状が表れにくい「漿液性(しょうえきせい)腺がん」

卵巣を構成する組織は

  1. 卵巣の表面をおおっている表層上皮細胞と間質細胞
  2. 卵細胞の周囲を取り巻く卵細胞固有の間質細胞
  3. 卵巣皮質の中にある卵細胞
  4. 卵細胞を結合する組織、血管
の4つに分けられ、これらに発生する悪性腫瘍が「卵巣がん」です。

takizawa_03.jpg病理学的に細かくわけると20種類以上に分類されますが、卵巣がんの約80%は、(1)に発生する表層上皮性・間質性腫瘍と呼ばれるものです。

そのうちの半数ほどを占めるのが漿液性(しょうえきせい)腺がんで、多くは50歳以上の閉経後に発症します。

「おなかが張る、しこりを感じる」「急にウエスト周囲が太くなった」といったサインはあるものの、自覚症状が乏しいケースがほとんどで、ある程度進行して大きくならないと検査でも見つかりません。

何の前触れもなく、突発的に発症して、急激に大きくなるため、定期健診などがあまり意味をなさないのも特徴です。

■良性の卵巣疾患が、がん化するケースも

一方、粘液性(ねんえきせい)腺がん、類内膜(るいないまく)腺がん、明細胞(めいさいぼう)腺がんなどには"前駆病変(ぜんくびょうへん)"という、いわゆる予兆があります。

粘液性嚢腫(ねんえきせいのうしゅ)、類内膜腺腫(るいないまくせんしゅ=チョコレート嚢腫)、子宮内膜症といった良性の病気が、10年、20年の歳月を経て、良性から境界悪性腫瘍へ、さらに悪性腫瘍化へとたどるケースが多いです。

若いうちに月経異常や不正出血などで婦人科を訪れ、このような診断がくだされたら、ぜひ定期的に経過をチェックしてください

もちろん、良性のうちなら妊娠・出産も可能ですし、万が一卵巣がんになっても、妊娠を強く希望される方には、2つある卵巣のひとつを残すなどの細心の注意を払った手術が行われます。

子育ても一段落し、月経も終わった年代と、これから子供を授かろうとする年代では、治療方針は大きく異なります。病状の進行状況とリスクを考慮したうえで、どこまで機能を残すことが可能なのか、主治医とよく相談するといいでしょう

※次回の瀧澤先生インタビュー(「卵巣がんはどのように診断されるの?」「チョコレート嚢腫ってがんになる?」)は平成22年1月27日アップです。

「上手な主治医の選び方」「上手な主治医への質問の仕方」 土井卓子 先生(湘南記念病院)

(第2回 湘南記念病院 かまくら乳がんセンター 土井卓子先生インタビュー)

■しこり=乳がん、ではない場合も

触診で見つけたしこりで受診される方の8割以上は、線維腺腫、嚢胞、乳腺症、乳腺炎などの良性疾患ですが、自己判断は禁物ですので、少しでも違和感や不安を持たれたら、すぐに専門機関を受診してください。

診断は、医師による触診、マンモグラフィ、エコーなどに加え、血液検査、病変部の細胞を細い注射針で吸いとって詳しく調べる「細胞診」、良性かどうか、がんのタイプを調べる「組織診」、「マンモトーム」、またCTやMRIといった検査を経て判断します。

IMG_3657.jpg乳がんと診断された場合、検査した病院で治療できるケースと、治療が可能な他の病院紹介してもらうケースがありますが、もちろん自分で病院を選択することができますし、他病院の医師に意見を聞くこともできます。これは「セカンドオピニオン」というもので、患者さんに納得したうえでより良い治療方法を選んでいただくために、医療の分野では一般的に普及しています。

主治医に対しても決して失礼な行為ではありませんし、「セカンドオピニオンを聞きに行きたいので、検査資料をください」と申し出れば、病院側は実費で用意してくれますから、他の病院で同じ検査を繰り返す無駄もありません。

■セカンドオピニオンという選択IMG_3506.jpg

セカンドオピニオンの選択は、「主治医の紹介」「患者会の推薦」「日本乳癌学会や各病院のHPからの検索」などの手段があります。

セカンドオピニオンでは、「診断は正しいか」、「他の治療法はあるか」といったことから、手術や入院の費用、病院設備の充実度の違いなども比べることができます。限りある時間内で望む答えを得るためには、まず自分が何を知りたいのかを明確にしておく必要があります。

乳がんになったショックでそれどころではないかもしれませんが、診察のときはメモを持参し、疑問に思ったことなどを書き留めて置くようにするといいでしょう。最終的に、病院・治療法を決定するのは、自分自身であると心得てください。

※次回の土井先生インタビュー(「乳がんの治療はどこまで?」)は、平成22年1月20日(水)アップです。