体外受精前 マンモグラフィは大丈夫? 投稿の回答 | 土井卓子先生(湘南記念病院)

fig1.gif投稿者:マンダリンさん(サービス業 40歳)

体外受精前のマンモグラフィについて


6月に体外受精を予定しています。採卵する少し前にマンモグラフィを受けると卵子に影響はあるのでしょうか? マンモグラフィは被爆量が多いと聞くので心配です。


土井卓子先生
土井卓子先生 回答:

マンダリンさん、
マンモグラフィは1回の撮影で3mGy未満と被爆量は非常に少なく、また他の放射線と異なり乳房をはさんで、そこにしか放射線はあたりませんので、卵巣にはほとんど影響しません。ですから、人工授精前に受けられてもまったく問題はありません。妊娠初期にマンモグラフィを受けても心配ないこともわかっておりますので、気にせずお受け下さい。

乳がんがあることに気が付かず妊娠するほうが心配です。検診を受け、大丈夫とわかって、安心して妊娠、出産に向かってください。それでも精神的に嫌な方は、エコーで乳房をチェックすることもよいでしょう。
マンモグラフィ, 湘南記念病院,かまくら乳がんセンター
写真:マンモグラフィを説明する土井卓子先生(かまくら乳がんセンターにて)

土井卓子(どい たかこ)先生
乳腺専門医
湘南記念病院 かまくら乳がんセンター
詳しくは、先生紹介

❒土井卓子先生記事:

❒その他参考になる記事:

出産後の(激)生理痛「もう頼る所がありません」投稿の回答 | 上坊敏子先生(相模野病院)

女性1.gif投稿者:エリーママさん (会社員 29歳)

もう頼る所がありません

1児を出産後、私の体が激変しました。まず、出産後の生理ですが、以前まで経験すらなかった生理痛に悩んでいます。まるで絞りひねられてエグられてるかの様な激痛に加え、息も苦しい。そして経血量がハンパなく多量です。ウルトラ夜用を2〜3時間おきにかえています。就寝時はオムツ型を着用しますが、初日と2日目は漏れている事が多い。市販の鎮痛剤は効かず座薬を使いますが、ほんの気休め程度。 次におりものです。常に薄いナプキンを敷いています。基本的に白〜黄色で、たまに血が混じった様な茶色の時もあります。常に不快感があり、ニオイもあります。そして最後は性交時の痛み。指の挿入すら痛くてSEXができません。濡れも悪いです。帝王切開で出産後9年間の悩みです。いくつも病院をまわりましたが原因すら分からず、改善がありません。お願いします。助けて下さい。

【上坊敏子先生 回答】

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エリーママさんへ



産後の月経痛と過多月経でお悩みのご様子、お察しいたします。

まず質問です。
 ①月経以外の時は痛みがないのでしょうか?
 ②性交時に痛むのはどこなのでしょうか?
 ③子宮がん検診は受けているのでしょうか?

以上のポイントを度外視しての回答です。

 ①まず、鎮痛薬を上手に使うことが大切です。痛みが強くなる前に早めの使用をお勧めします。なぜ市販薬を使用しておられるのか分りませんが、産婦人科の主治医を決めて、その医師から、痛みの程度に応じた処方を受ける方がいいと思います。

 ②過多月経、月経痛の両者を軽くするためには、おそらくピルが一番有効ではないかと思います。ピルにもいくつかのタイプがありますが、このような症状には1相性のピルの効果が高いと言われています。漢方薬も効く可能性がありますが、内服する量が多いこと、効果が出るまでに時間がかかる場合が多いこと、だれにでも効くとは限らないこと、などから、ピルをお勧めいたします。

 ③いくつもの病院を受診して原因が分からないとのことですが、診察したわけではない私にも原因は分かりません。症状からは子宮内膜症を疑いますので、もし最近は検査を受けていないのであれば、もう一度検査をお受けになってはいかがでしょうか?

 ④おりものについては、月経周期のどのような時期に色がつくのかなど、きちんと記録して産婦人科医に相談されることをお勧めします。もちろん子宮頸がん検診は不可欠ですよ。

ヒルル「専門医 ドクター Q&A」は、ユーザーに対して診断を行うものではありません。ある事例に対して、がんの予防や早期発見、治療などについての専門医による助言を提供し、医学的にどのような選択肢があるのか理解を深めていただくための情報コンテンツです。また、投稿コメントが必ずしも投稿者自身の状態を正確に評価し、過不足なく記述されているとは限りません。当サイト内で得られた情報はあくまでも参考程度にとどめ、個々の症状およびケースについては、しかるべき医療機関を自身の判断で受診してください。(ヒルル管理者)

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上坊敏子(じょうぼうとしこ)先生
社会保険相模野病院 婦人科腫瘍センター長
北里大学医学部産婦人科客員教授
 詳しくは、 ・先生紹介


子宮体がん(子宮内膜がん) 投稿の回答 上坊敏子先生(相模野病院)


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投稿者:悩めるクマさん (医療従事職 44歳)

子宮体がん(子宮内膜がん)


先日、近所の帝京大学溝の口病院にて子宮内膜ポリープの子宮鏡手術を行いました。ポリープの細胞検査から子宮体がんが発見され、子宮と卵巣の全摘出手術を勧められました。
術前検査の細胞診では検知されなかったので、ごく初期だと思う(G1)のですが、子宮全摘出ということに非常にショックをうけています。41のときに結婚し、夫がしばらく病気で休職していたため、子作りは控えていました。最近夫の調子もよくなって病状が安定してきたので、年齢的に難しいとは思ったのですが、今年一年はジャガー横田さんのように不妊治療をしようと思っていたからです。年齢的にも子供は難しい。がん初期だからこそ、根治すると言う意味で全摘出がスタンダードな考え方。若い方ならオプションとしてホルモン療法もご紹介するのですが・・・。セカンドオピニオンも考えられても良いですが、早いうちに決断を!といわれました。いろいろ調べてみたのですが、やはり、全摘出が最良のようなんですよね。手術するに当たり、この病院で良いのか、癌専門病院にいってセカンドオピニオンを受けたほうがよいのか悩んでいます。知識のある方どうか教えてください。



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上坊敏子先生 回答;

悩めるクマさんへ



 不妊治療に取り組もうと思っていた矢先に、子宮体がんと診断され、子宮摘出を勧められたショックをお察しいたします。
 子宮体がんの基本的な治療は子宮と両側の卵巣・卵管の摘出です。40歳までの患者さんで進行期がⅠa期、G1類内膜腺癌であれば、ホルモン治療を行うこともあります。私自身も多くの患者さんにホルモン療法を行ってきましたが、その経験からは、ホルモン療法でがんが消えるのはせいぜい70%~75%です。しかも半数近くの患者さんは再発します。これに対してⅠa期、G1類内膜腺癌の患者さんに適切な手術を行えば、98%近くは手術だけで完治させることができます。これだけでも手術療法が断然優れていることがお分かりになると思います。
 ホルモン療法のもう一つの問題点は、少なくとも半年はかかるという点です。仮に半年で運よくがんが消えたとしても、すぐ妊娠できる患者さんはいません。体がんの患者さんは排卵障害を伴っていることが多い上に、もともと不妊症の方も少なくありません。また、子宮内膜の状態も、体がんにかかったことがない女性に比べると、着床のための条件が不良です。ですから、がんが消えてからは、専門病院での積極的な不妊治療が必要です。速やかに妊娠しなければ、体がんが再発する危険性が高くなります。すでに44歳とのことですから、不妊治療に移る頃には45歳になっている可能性が高いと思いますが、一般的にこの年齢での妊娠成立は非常に困難です。
高齢で妊娠された有名人の報道に接することも多いので、心が揺れることは想像できますが、「子宮体がんではない」という女性とは、条件が全く違います。ここは重大なポイントです。
以上から、手術をお受けになることをお勧めします。現在診察を受けている病院からの説明は常識的な内容だと思いますので、この病院での手術に何か問題があるのでなければ、そこで手術を受けるのが一般的だと思います。セカンドオピニオンをお受けになることで気持ちの整理がつくのであれば、お受けになることに問題はないと思います。

上坊敏子(じょうぼうとしこ)先生
社会保険相模野病院 婦人科腫瘍センター長
北里大学医学部産婦人科客員教授
 詳しくは、 ・先生紹介

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急性ストレス障害とサバイバー・ギルトを乗り越えて - 東北大震災によせて - 保坂隆先生

急性ストレス障害, サバイバー・ギルト, 東北大震災, 保坂隆, 聖路加国際病院 精神腫瘍科
緊急寄稿 東北地方太平洋沖地震によせて
 ー 急性ストレス障害 と サバイバー・ギルト を乗り越えて ー
聖路加国際病院 精神腫瘍科
保坂 隆 March 27, 2011

 震災後2週間が経過しました。依然として続いている余震に放射能漏れも加わり,国民すべてが不安状態に陥っていますが,そろそろ「心のケア」が必要な段階になってきています。

❒ 災害時1ヶ月以内に起こる「急性ストレス障害」 

 もともと精神疾患をもった患者さんたちにとっては,薬が不足していたり通院が困難になったりという点が問題になっています。 また,これまで精神疾患をもっていない方にとっても,この時期には精神的に不安定になってきています。死に関わる今回の地震や津波の被害に遭遇したり目撃するような大きな出来事の後で不安・不眠・興奮・恐怖が生じたり,逆に現実感が消失したり茫然自失となるような精神状態は「急性ストレス障害」と言います。大きな出来事の1ヶ月以内の場合に診断できますので,地震から2週間のこの時期は,まさにたくさんの「急性ストレス障害」の患者さんがいらっしゃることになります。 これは被災地の方々に限ったことではなく,TVを通じてリアルな被害状況を目の当たりにしたり,実際に余震が続いている東日本全体に広く見られることになります。

 ❒ 可能ならば恐怖心が残る場所から遠ざかること

 そして可能なら,恐怖感が残る場所からできるだけ遠ざかることです。町を失った方たちが集団で他の町に移動している場合には,故郷を離れる寂しさはあっても,恐怖感は軽減していきます。そして,恐怖心を呼び戻すような報道番組はもう見たり聞いたりしないということも効果があります。2週間経った今も情報を集めることは大切ですが,そろそろ報道番組から離れてもいい時期だろうと思います。

 ❒ 生きていることに感謝

 この「急性ストレス障害」に加えて,「サバイバー・ギルト(生存者の罪悪感)」も生じます。大きな災害で生き残った人が「自分だけが生き残っていいのか?」とか「周囲の人間を助けられなかった自分が生き残っていいのか?」という罪悪感です。このサバイバー・ギルトに悩む方に対しては,次のことをよく考えて理解していただきたいと思います。

 ①この災害は予測不能で,生き残った人でも大きな喪失をしていること
 ②災害発生時にも人は「怒り」が生じ,そのはけ口がない時には自分に向かうこと

 そして大切なことは、

 ③人は、どんな喪失感に打ちひしがれていても,前に向かって進まなければいけないこと
 ④具体的な支援・復興活動に加わること

 です。是非、皆さんの心に刻んでいただけたらと思います。


 人は生きている限り諦めてはいけません。 生きていることに感謝して,ご自分の日常生活をしっかりと守った上で、自分も復興活動に参加していくことができると思うことで,罪悪感は少なくなっていきます。 いま日本中の人が,自分たちができることを通して被災地の復興を願っています。 支援する側の人たちは,被災地の方たちの元気な姿を見て,触れて,逆に元気をいただいています。 助け合うことの大切さを教えてくださった皆さんをずっと応援していきます。


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保坂 隆(ほさか たかし)先生
聖路加看護大学院 臨床教授、聖路加国際病院精神腫瘍科
ご専門は、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)、リエゾン精神医学
 詳しくは、
  ・先生紹介

6. 死を意識して生きると、人生が豊かになる 大西秀樹先生

(BY Atsuko MINATO)

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ヒルル:人はいつか死ぬのですが、私たちは日々の生活の中で「死」を意識することを敢えてしませんね。やっぱり自分や家族が死ぬのをイメージしたくないですから。
大西先生:そうですね。でも 人生は不条理 なので、いろいろなことが起こるんです。一生懸命に真面目に生きていても、辛い ことは起こります。でも人間は辛いことを乗り越えて 成長 して行くのです。そういうことを頭の隅っこに置いておくと、辛いことに対峙する 心構え ができるかもしれません。難しいことですが、たまに復唱するのはいいかもしれません。

ヒルル:そうですね。いつも考えている必要はないと思いますが、自分の人生をどういう風にクローズしたいのか、ということを頭の隅に置いておくと、自分の生き方が決まるかもしれませんね。
大西先生:死を見つめて生きる と、命は有限、命の尊さ、愛しさ に気付きます。そうすると 人生が豊か になるんです。なぜなら、物事の優先順位 がはっきりし、自分にとって本当に大切なもの が見えてくるからです。本当に大切なものを見分けることができたとき に、人生は豊かでシンプルで迷いのないものになる と思います。

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ライター: 湊 敦子 (Atsuko MINATO)   プロフィール
外資系IT企業で約20年間「働きマン」のように働いていた矢先、43歳の時に右乳がんを健康診断にて発見される。Stage I で、乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検、放射線治療を経て、現在ホルモン療法中。ホルモン療法が一因で、子宮筋腫が急激に巨大化し、3年後に子宮全摘。病気や離婚など、他人から見ると不運や不幸のオンパレードのような人生で、妹によると「病気のスタンプラリー」に参加しているらしいが、本人はうつ状態も克服し、いたって元気。落ち込んでいる友人に「私の人生と交換するぅ?」と問いかけて励ますのが得意。趣味はドラムとフラワーアレンジメント、真面目な主治医を笑わせること。そして最近はストイックな登山。  ブログ:http://ameblo.jp/acco7/

撮影協力: beacon  東京都渋谷区渋谷1-2-5   03-6418-0077

5. 周りの人に出来ること 大西秀樹先生

(BY Atsuko MINATO)

ヒルル:ご遺族の方に対して、周囲の人ができることは何でしょうか?
大西先生:言葉をかけることより、そばにいること、冷静に話を聞くことでしょうか。それから、お節介にならない程度の親切な行為、例えば お惣菜 など持って訪ねるなども、ご遺族の気持ちを慰める と思います。
してはいけないことは、 騒ぎ立てたり責めること 。「 ~した方がいい 」「 ~しなさい 」「 めそめそしちゃダメ 」など、 自分がそうあってほしい という理想の姿を 相手に押し付ける ことです。「 あなたの気持ちはよくわかる 」も NG 。その気持ちは ご遺族以外の方にわかるわけがない のです。

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ヒルル:ご遺族が責められたりすることがあるのですか?
大西先生:実は「 なじられた 」と 傷ついて 、 遺族外来 に来られる方は多いのです。お葬式での花輪の位置、席順、「 どうして早く病院に連れて行かなかったのか 」など、さまざまなことで なじられる ようです。なじる側 が単純に悪いとも限りません。もしかしたらその人にとっても大切な人で、死別の悲しみが ゆがんだ形 ででてきているのかもしれないからです。しかし なじる 方の中には、 自分のプライドや関心事 の方が、遺族の悲しみに優先していることもあります。そのようなことが引き金で親族間の付き合いがまったくなくなることもあります。隠れてお墓参りに行かなければならない人もいます。人間関係と人の気持ちは、非常に複雑。 死 が新たな苦しみと試練 をもたらすことがあるということもまた事実です。



4. 亡くなった方との関係の再構築が必要 大西秀樹先生

(BY Atsuko MINATO)

ヒルル:実際にはどんなタイミングで気付かれるんでしょうか?
大西先生:あるご主人を亡くしたご婦人は、夫がいなくて悲しくて仕方がない、そして次に夫がいないから恥ずかしいという気持ちになり、犬の散歩も買い物も帽子を深くかぶって早朝か深夜、人と会わない生活を続けていました。しかしある時、娘さんに「お父さんはそんなみじめな生き方だった?悲しいのは自分が悲しいだけでしょ?お父さんは立派に病気と闘って死んだ」と言われて目から鱗が落ちたそうです。またある時は、泣いていても笑っていても同じように時は過ぎていく、ということに気付いたそうです。また、別の患者さんは、 Il Divo の美しい広がりのある音楽を聴いて、夫がいなくなったという考え方から、夫は 広い世界のどこかにいる のかも?という考え方へ変わっていきました。

ヒルル:何かに気付くことで、物事を別の角度から見ることができるようになるんですね。
大西先生:そうですね。でも配偶者を亡くすと、自分の人生も終わった、自分の人生には意味がないと頑なに思ってしまうので、立ち直るのは容易ではないんです。時間をかけて 意味の再構成 をしていくことが必要です。 意味のない人生などない ということに気付いて、亡くなった方との 新しい関係性を構築 する、ということです。亡くなった方が自分を後押ししてくれるとか、つながっている というという感覚を抱くことができるんです。

ヒルル:いつか悲しい思い出が違う形に変わる日がくるのでしょうか?
大西先生:娘さんを 卵巣がん で亡くされて 10年 遺族外来 に通院されている方も、いまだに亡くなった子供と同世代の人を見るたびに「 娘が生きていれば・・・ 」と思い出してしまうそうです。でも片付けられなかった娘さんの部屋も、娘さんに送る「 天国への宅急便 」と思って片付けることができるようになりました。 悲しみを完全に昇華する ことは難しいですが、 悲惨な思い出 を少しずついい思い出に変えていくことはできると思います。一足飛びにはいきません。何年もかけて、行きつ戻りつしながらです。 そのお手伝い をするのが、私たちの仕事だと思っています。

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3. いろいろな考え方があるという「気付き」が大切 大西秀樹先生

(BY Atsuko MINATO)

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ヒルル:遺族外来 には、患者さんはどのような症状を訴えてこられますか?
大西先生:慢性的な睡眠障害、罪悪感、絶望感、抑うつ などの症状を訴えられる方が多いです。遠くの地から来る方もいらっしゃいます。なぜなら、遺族の診察を行っているところがあまりないのです。遺族を亡くした病院には行けない、その駅で降りられない といった症状があるために 私たちの病院まで来る人もいます。初診時は四割の方が うつ病 に罹患しています。

ヒルル:大西先生はそのようなご遺族にどのように対応されているのですか?
大西先生:まずお話を聞いて、問題点を明らかにします。 話す という作業は、ご自分の整理です。話すだけ でも気持ちが楽になる効果があります。中立的な立場で、決して批判しないでお話を伺い、適宜「こうするといいかも」といったアドバイスやご提案を行うこともあります。これを 支持的精神療法 といいます。また「話す」という意味では、ご遺族同士が会話できる機会も設けます。同じ気持ちを抱える方たち同士で話し合って気持ちを共有できることは非常に有効です。それから、出来る援助をする、ということをお伝えします。

ヒルル:出来る援助というのは、具体的にはどんなことでしょうか?
大西先生:まず問題点を整理します。 うつ病 がある場合には、その治療を優先します。経済的な問題はソーシャルワーカーと、相続などの問題は法律家と連絡を取り、一つずつ問題を片付けていきます。それから心理的介入といって、「 認知行動療法 」を活用し、患者さんが様々な考え方ができるようにガイドを行うこともあります。

ヒルル:考え方を変える方法について具体的に教えていただけますか?
大西先生:グループで 認知行動療法 を行う時、例えば「『明日、東京地方は大雨です』という文章から、あなたは何を連想しますか?」と質問してみます。「スーツが濡れる」と言う人もいれば、「作物がよく育つ」と言う人もいます。こうして、何を連想するかは人によって違うこと、いろいろな考え方のパターンがある ということに気付いてもらいます。この「 気付き 」が大切です。

2. 配偶者との死別は最大のストレス 大西秀樹先生

(BY Atsuko MINATO)

ヒルル:そもそも、がん患者のみならず、がん患者をサポートする家族も、がん告知の時点から強いストレスにさらされますね。
大西先生:家族は、大切な人を失ってしまうかもしれないという悲しみ(予期悲嘆)を抱えながら、ケアギバー(caregiver)として献身的に振る舞い、自分を抑えがちです。悲しいのに患者には笑顔を向けるという二つの矛盾する立場が、家族の心を余計に つらく します。それ以外にも、経済的な問題(一家の稼ぎ手がいなくなる)や子供の問題(お母さんが患者の場合)などの社会的問題を抱えることになります。また家族の中に潜在していた問題が急に顕在化したり、摩擦が生じたりすることもあります。がん患者の 3-4 割が何らかの精神疾患を併発しますが、実はそのご家族も 1-4 割の割合で 適応障害 や うつ病 などの精神疾患を併発します(調査によって差があります)。そしてご家族が受ける精神的ダメージの大きさも、がん患者のそれとほぼ同程度なんです。一般的に介護している人の免疫機能が低下し、死亡率は上昇すると言われています。ご家族が「第二の患者」と言われる所以です。このようなご家族の心のケアを、家族外来 で行っています。

大西秀樹先生,精神腫瘍科,埼玉医科大学国際医療センター

ヒルル:そして近親者、特に配偶者が亡くなられたりすると、さらに事態は深刻になるんですね。
大西先生:アメリカで行われた人生のさまざまな場面における ストレス度 の調査では、配偶者の死を最大の 100 と数値化しています(図1)。配偶者との死別は、何にも増してストレス度が高いんですね。また54歳以上の男性の調査では、配偶者、パートナーとの死別後 6カ月以内の死亡率が、配偶者のいる場合に比較して約 40% 上昇することがわかっています。また死別後1年以内に 抑うつの兆候 を呈する未亡人は 47% にのぼり、夫がいる女性の8%と比較すると有意に高いことが知られています。そして配偶者との死別が、高齢者における うつ病 発症の最大の 危険因子 と言われています。ここには「子供との死別」という項目はありませんが、そのストレス度と悲しみは配偶者の死に勝るとも劣らないと考えられます。

ホームズとレイの「社会的再適応評価尺度」
  ライフイベント 生活変化単位値
  配偶者の死 100
  離婚 73
  別居 65
  刑務所などへの勾留、服役 63
  近親者の死 63
  自分のけがや病気 53
  結婚 50
  解雇、失業 47
  夫婦の和解(よりを戻す) 45
  退職や引退 45
  家族が健康を害する 44
  妊娠 40
  性生活がうまくいかない 39
  新しく家族のメンバーが増える 39
  仕事上の変更(異動など) 39
  経済状態の変化 38
  親友の死 37
  職種換えまたは転職 36
  夫婦の口論の回数が変わる 35
  1万ドル以上の借金 31


1. 一番厳しい状況に置かれた方々の典型といえる がん患者とそのご家族、ご遺族の心のケアを行う 大西秀樹先生

(BY Atsuko MINATO)

ヒルル:今日は悲しい話題ですが、愛する家族を亡くした方々がどうやったら悲しみと向き合えるのか、大西先生に伺っていきたいと思います。まず先生のご専門を教えていただけますか?
大西先生:私はがん患者とそのご家族、そしてご遺族の心のケアをする 精神腫瘍医 です。病院では「家族外来」や「遺族外来」を設けて、患者さんの他に、そのご家族、ご遺族の心のケアにあたっています。

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ヒルル:大西先生はこれまで多くのがん患者、そのご家族、ご遺族と向き合われてらっしゃったのですね。なぜがん患者をご専門になさっているのでしょうか?
大西先生:日本人の二人に一人ががんに罹患し、三人に一人ががんで死にます。そして、がん は日本人の死亡者数で最も多い病気です。「がん=死」というイメージがあることから、がん告知はその方の人生を根底から覆します。人生計画、家族計画 がすべてご破算になってしまうんです。がんがもたらす痛みは、身体、心、社会的、霊的、すべての局面に及びます。がん患者の家族も患者同様の心の痛みを経験します。配偶者と死別後 うつ病 になったり、後を追うように亡くなられる方 も少なくないんです。ですからがん患者とその家族は、ある意味一番厳しい状況に置かれた方々の典型と言うことができます。ここでの経験が、他の病気や事故、事件で家族を失った方のケアにも役に立つのではないかと考えています。


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